比嘉 元樹 (新日鐵住金かずさマジック)

比嘉 元樹 (新日鐵住金かずさマジック)

2015-02-14

一昨年の社会人野球日本選手権の覇者、新日鐵住金かずさマジックに昨年入部したのが比嘉元樹。浦添工業高校から鹿児島の第一工業大学を経て、昨年4月に新日鐵住金に入社した。浦添工業時代は運天ジョンクレイトン(前日本ハム)に劣らぬ好投手としてエースナンバーを競い合った。体重100kgの巨漢から切れのある速球を投げ込む姿を覚えている高校野球ファンも多いと思う。今、社会人の強豪チームでの活躍と将来のプロ入りを目指す。

半年間で15kgの減量

「昨年は、野球に集中できたかと言うとそんなにできなかった。ほとんど体づくりがメインでした。まずは体重を落として、体を絞ってという感じでした」と社会人1年目も振り返った比嘉。大学時代に105kgあった体重が現在は90kg。半年あまりで15kgも体重を落とした。

「大学のときは105kgの体重で全然投げれていたのですが、社会人のパフォーマンスができる状態でなかったので1回落としてみようと。体重を落とすことで自分のパフォーマンスが上げられるかなと思って。キレもでないし、それこそ疲れもたまりやすいんじゃないかなと。一度体重を落としてみて、それから決めようかなと考えました」。高校時代も100kg、最後の夏の大会前に7kg落として93kgだったというが大学時代は105kgまで増えた。それでも高校、大学と普通に投げれていたといい、大学時代のストレートのMAXは146kmだった。そんな比嘉が社会人1年目に自分を変えてみようと減量に取り組んだ。

「社会人は練習の質も量も大学時代に比べて全然違うのですが、入部した頃は練習についていくのが精一杯という状況でした。太り過ぎていて、結構ヘトヘトになって練習から帰ってきていました。最初はそれに慣れるのに相当時間がかかりました」。皆と同じ練習メニューなのについていくのがやっとで、野球に対する気持ちの余裕も全くなかった。そこで、とにかく体重を落とすことで自分を変えてみようと思った。もちろん周りからも体重を落とせと言われていたが「別に監督には、そこまで強くは言われていなかったのですけど、僕の中で1回落としたいというのがあったので自分でやっていました。普段の練習と別に自分で自主練みたいな感じで取り組んでいました」。食事はそれほど変えずにトレーニングだけで体重を落とした。「いかに大学時代に練習をしていなかったかですが(笑い)」。

本来の投球が出来なかった1年目

「前半、中盤は、全然試合で投げていません。チームからは試合で投げれと言われましたが、僕の中で手一杯だったので。体重を落としている途中で、バランスや体調が自分で整えられなかった。トレーニングして絞っていたのですけど、野球につなげられなかった」。もちろん投げ込みも行なっていたが、本人の中でも1度体重を落としてからとの意識もあり、試合で登板するようになったのは秋に行なわれた関東リーグから。「日本選手権の予選で負けたあと行われた関東リーグやオープン戦とかで投げさせてもらっていました。でも、思うように腕も振れなかったですし、コントロールにばらつきがあって関東リーグは全然ダメでした。オープン戦は、大学相手に良かったり悪かったりでした」。コントロールに絶対の自信があった比嘉の投球は安定感を失ったままシーズンを終えた。「昨年は正直ダメでした。体調面が不安定だったというか、大学の時とは全然違うなというのが自分の中にありました。急に球にばらつきが出て。ボールも行かないし、コントロールもバラバラ。体重がどうこうというよりは環境が変わったことによる影響が少しあったと思います。それを修正するのに1年間では出来なかった。」しかし今、ようやく自分のピッチングを取り戻しつつあるという。

球速を取り戻し、今年は春先から勝負をかける

大学4年の秋の九州大会で肩を痛めた比嘉はMAX146kmの球速が、入社時は130km前半まで落ちていた。 「今は140kmまで戻っています。徐々に徐々にきてはいます。肩を壊してからは怖がっているのも自分の中にあって、そこはチームと相談してやっています。コーチにスピードをまず戻したいと話して、そこのトレーニングはやってきました。あとは暖かくなって投げ始めてからですね」。ストレートが遅くなってからはコントロールとバッターに間を与えない投球テンポを持ち味にしているというものの、球速が戻れば大学の頃の力強いピッチングがよみがえる。「去年は全然思うように投げられなかったのですが、今は投げれてきているので、今年は一発目から行くような感じで挑みます。春先のスポニチ大会、最初の大会が勝負かなと思っているので、そこで結果を残して都市対抗の予選でも投げさせてもらえるようにしたいです。ストレートのスピードを戻して、ケガをしないようトレーニングをして、1年間を通して投げることが今年の目標です」

新たな自分の可能性へ挑み、上を目指す

新日鐵住金かずさマジックは、2013年に日本選手権に優勝した。チームの目標は都市対抗での優勝というだけに選手の野球への意識も高い。「まわりのピッチャーをみていても意識の持ち方とか全然違いますね。ブルペンに入っても低目とか変化球でストライクをとれる球をとことん磨くとか。それと、まわりが給料をもらっているという意識があるので、僕もそれを身にしみてそこからですね野球に取り組む意識が変わりました」という比嘉。大学時代から一変した練習への取り組み姿勢で15kgの減量を行い新たな自分の可能性にチャレンジしている。現在、新日鐵住金かずさマジックの投手陣は10名。今年さらに新卒で4人の投手が加わる。チーム内の競争も増すが、比嘉が目指すのは、その先、プロ野球の世界。まずはチーム内でエースの座を勝ち取り、そして、同級生の運天がなし得なることができなかったプロ野球での活躍という夢を実現してほしい。

Profile

比嘉 元樹 新日鐵住金かずさマジック

平成3年7月27日生。177cm 90kg A型。浦添小2年生で野球を始める(仲間ジャイアンツ)。浦添中学時代は軟式野球部。浦添工業高校では運天とエースの座を争い、秋、春はエースナンバーをつける。秋は県大会ベスト4へ進出。第一工業大学では、2年の春の九州大会準決勝で初先発、初完封。以後、主戦投手として活躍。大学3年時には九州地区リーグ選抜で結成されたJAPANのメンバーとしてオランダで行なわれた世界大会へ出場した。
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