東浜巨投手
東浜巨投手
「去年とは違う東浜を見せたい」ソフトバンク東浜巨投手
2015-02-14
プロ初体験の救援登板
4月3日のヤフオクドームで先発した東浜巨は、5回を投げて4失点と決して満足出来る成績では無かったが、24人の打者に対し被安打3本のみと、ひとつの手応えは感じていた。6月29日の西武戦、7月6日の楽天戦ではともに6回を投げて勝利投手となる。だが、続く日本ハム戦では6回3失点とクオリティースタートをクリアするも敗戦投手となると、7月最後の楽天戦では5失点でノックアウトされてしまい登録抹消となってしまった。
優勝争いとなった9月の終盤では、16日に大隣憲司の完封でオリックスに勝利するも、その後立て続けにチームは連敗。投手陣もフル回転でのぞまざるを得ないことで、ファームにいた東浜巨に再び声が掛かる。しかしその役目は、僕らファンにとっては心から願っていた先発、という形では無かった。本人もそう思っていたはずだが、「どんな形であれ、上(一軍)で投げることが一番」との思いを胸に、東浜巨はロングリリーフへの準備を始めていった。
東浜巨「救援登板はプロに入って初めての経験でしたね。先発と違い、既に試合が動いている状態。どういう展開にしろ、僕らロングリリーフを担う人がマウンドへ行くときというのは、負けているときが殆どなので。とにかく相手に点をやらず、こっちに流れを戻すぞ!ということしか考えて無かったですね」
19日の西武戦で中継ぎとして1イニングを無失点で抑えたものの、チームは敗退。ソフトバンクはまさにドロ沼状態だった。
17日 ●4-10 オリックス
18日 ●2-3 オリックス
19日 ●3-6 西武
20日 ●5-6 西武
21日 ◯3-1 西武
23日 ●2-3 楽天
24日 ●3-6 楽天
25日 ●7-8 楽天
26日 ●3-9 楽天
28日 ●4-6 日本ハム
24日の楽天戦が、結果的に2014年のリーグ戦最後の登板となった東浜巨。エース攝津正が3回6失点でまさかの降板。だが、どんなに良いピッチャーでも、あのようなことは起こり得ることなのだからと、自分に与えられた役目を果たすべく、着々と準備をしていたという東浜巨は4回の頭からマウンドに上がると、8回まで相手のスコアボードにゼロを並べる好投を見せる。その間、味方打線は柳田悠岐や今宮健太にタイムリーが出るなど3点を返し、流れを少しずつ戻していった。
東浜巨「あの6イニングがあったからこそ、その後のクライマックスシリーズや、日本シリーズでもベンチに入れたし、ロングを任せてもらえた。その意味で、あの試合は大きかったと思います」
崖っ淵だったソフトバンクだったが10月2日、オリックスとの延長10回の死闘を松田宣浩のサヨナラ打という形で劇的なリーグ優勝を飾る。迎えた日本ハムとのクライマックスシリーズでは、1勝1敗となった3戦目に登板機会が巡ってきた。先発の攝津が2回7失点の乱調で降板すると、3回から東浜巨がマウンドへ。中田翔にホームランを浴びるなど、4イニングを投げて5失点を喫したが秋山監督は続投指令。大味な試合の中、コンセントレーションを持続するのは難しいところだが、7回からの3イニングを無失点に抑え意地を見せた。
20日、大隣が7回無失点に抑える好投を見せて4対1で日本ハムを下したチームは、日本一を懸けて阪神タイガースと決戦。東浜巨の出番は第4戦に巡ってきた。
先発の中田賢一がピリッとせず、3回で降板すると二番手として登場。これまでの東浜巨の救援全てがリードされた場面であったが、一番大事な頂上決戦の同点での起用に、結果を残し続けてきた東浜巨へ対する秋山監督の信頼の高さをうかがわせる瞬間でもあった。そんなベンチの期待に、東浜巨は3回無失点の好投で応える。そして延長10回、中村晃のサヨナラ3ランホームランで勝利を収めたソフトバンクは、第5戦も1対0でものにし、見事日本一に輝いたのだった。
手応えを感じた内角攻め
11月、秋山監督からバトンを受けた工藤新監督が、秋季キャンプを張る東浜巨のところへ来て直々に指導した。「理論的で色々な考えを持っている方」と、東浜巨も信頼を寄せている。自分にとって不甲斐ない一年だったと語る東浜巨だが、シーズンを通しての相手打者への内角攻めは上手くいった。
対右打者→15打数3安打
対左打者→17打数3安打
内角を突いた通算被打率 .188
東浜巨「そこ(内角攻め)は手応えありましたね。ずっとそこを攻められるように練習してきたので。掴めたなというところはあります」
東浜巨の内角への練習に「あと数ミリ!」と声を掛けた工藤新監督。二人に共通する思いが来年、より厳しい内角攻めを見せるニュー東浜巨を生み出すことだろう。その一方、不安な数字もあった。アウトローの被打率が異常に高かったのだ。
対右打者のアウトロー被打率.429
対左打者のアウトロー被打率.455
ストレートはもちろん、右打者へのスライダーと左打者へのシュートやシンカーなど。高校、大学と渡り歩いた東浜巨のピッチングの生命線のひとつが、アウトローであったはずなのだが。
東浜巨「実は、アウトローに決まった!と思えるものは無かったのです。甘く入ってしまえば打たれるのがプロの世界。角度も無かったし、自分が思うアウトローでは無かった」
イメージに程遠いシーズンだった原因のひとつがここにあった。だが安心していい。そんな中でも良い感覚というものはあったと答えた東浜巨。このスランプも、2月からのキャンプインで克服してくれるはずだ。
生まれた場所で原点回帰
監督が変わればコーチも変わる。2015年のソフトバンクは環境が大きく変化していくだろうが、そこも楽しみのひとつだと言う東浜巨自身も、もう一段ステップするための計画をあたためていた。
東浜巨「新しい球を使っていくのかどうか考えています」
新球が何なのかは僕らにはまだ分からないが、キャンプインしてのブルペンや練習試合、オープン戦で試しつつ、モノになりそうなら武器として考えることを明かしてくれた。スタンリッジ、中田、攝津の二桁勝利トリオを始め、大隣、武田翔太、さらには昨年末の球界大ニュースのひとつとなった松坂大輔が入団。共に自主トレを行った飯田優也や、秋山拓巳(阪神)らと、ウエスタンリーグ最多勝を記録した東浜巨だが、「ウチの投手陣の層は確かに厚い。だけどやるからには上(一軍)で投げることを目指さないと」と語った。昨年は糸満西崎球場で行ったが、今回は具志川球場にて自主トレを開始。
東浜巨「生まれた場所でやれる幸せを感じながら体を動かしていきたいなと。原点に戻れるしリセット出来る。年に一回はここで、との思いはより強くなりました」
肩や肘、身体の部分は全く問題なし。全てが順調に進んでいるとも答えてくれた東浜巨。また、そうでなくてはチーム内の争いに勝つことは出来ないだろう。
東浜巨「大学は違うけど同じ東都リーグでしたし、一緒に食事した仲でもある洋奨とチームメートになることは楽しみです」
プロでの成績が、納得いかない結果しか残せていないことを、一番感じているのが東浜巨本人だ。だからこそ、島袋洋奨に多くを言えることは無いですと先に言いつつ、でも、先輩として出来ることがあれば協力を惜しまないと語った。
最後に、今年の抱負とファンに対する気持ちを載せて終わりにしよう。
東浜巨「今年は自分自身、勝負の年だと思う。チームも何年も待ってはくれない。2月1日に合わせて体を作っているし、すぐに投げられることが大前提として自主トレを行ってきました。やるからには1試合でも多く上で投げないといけない。(チームやファンにも)去年とは違うぞ!というところは見せていかないといけない。これまでの野球人生、ずっと完投してきているので、先発として長く放れるように。先発として僕はやっていきたい。そこへの拘りは強く持っていきたいなと思っています」
福岡のファンの声援も力になるが、やっぱり僕ら沖縄のファンの応援こそが、東浜巨の背中を押してやれるのだ。チバリヨー!なお!