上原拓先生のアフリカ(タンザニア・ザンジバル)便り
上原拓先生のアフリカ(タンザニア・ザンジバル)便り その2
2014-10-11
上原氏「JICAとは独立行政法人で政府の組織。そこが事業として行う青年海外協力隊の一員となるために英語と技術力を試す試験が1年に1度あります(現職教員特別参加制度は1回。一般募集が春と秋の2回)。ですが僕、英語が苦手で(苦笑)。最初の年、今から3年前になりますが、県の教育庁の面接を受けるなどして沖縄県からOKは出たのですが、東京都での二次試験で英語の点数が足りなくてダメだったのです。悔しくてそこから英語の勉強を基礎から始めて英検準2級まで取った次の年、何故か今度は県側がダメだと。」
「前年度はOKを出したのに今度はダメ。そりゃ簡単に納得出来ないですよね」
上原氏「でもそこで僕を支えてくれたのが大切な友達。ときに諭されたりときに励まされたりと我慢に我慢を重ねてようやく去年、県とJICAから合格をいただきました。福島県にあるJICAの訓練所、といっても殆ど語学の勉強なのですが、4月からの2ヶ月間そこでの訓練を経て今ここへ戻っているという次第です。」
「その熱い思いの全ては當山先生との会話から始まったのですね」
上原氏「昔の話をしてくれて、とっても良い経験になったよと。次の日に當山先生と一緒にネットで調べたら、現職で席を残したまま向こうに行ける制度があると。これしかない!とすぐに申込書を書いてましたね(笑)。」
「ちなみにそれは、何年間か向こうに派遣されたら帰ってくるということなのですか?」
上原氏「2年間ですね。一般の方は4月から(前述した)訓練を受けて後、6月頭から派遣され2年後の6月に帰ってきます。でも僕は3月に、というのも学校の教員ですから年度をまたいで帰ってきても現場が困りますよね。ですから僕の場合はその一般の方よりも早い平成28年の3月に帰ってくるので1年と約9ヶ月ということになります」
「そこで野球を教えられるのですね」
上原氏「面白いのですが野球を教えに行くという職種があるのです。僕はもちろんこれで行きたかったのですが、派遣先の各国からこの職種が足りないと、またはこの職種が欲しいから派遣してくれという形になっているので、その都度自分の希望する職種に空きがある、というわけではないのです。僕が受かったときには野球という職種の要請が無くて。それで体育ということで登録したらタンザニアのザンジバル島にある国立大学からあったと。」
「体育の教師として行かれると」
上原氏「いや、その大学で体育の先生になりたい学生に、体育の授業を進めていくにはどうやったらいいのかという指導をお願いしますという要請です。」
「現地の体育の教師を育てるという職種となるわけだ」
上原氏「おそらくタンザニアでは体育の授業が確立されていないのでしょう。でも以前、現地の生徒たちのビデオを見たのですが、例えばボールを蹴るだけとか投げるだけ、走るだけとかならば、相当な身体能力を持っている。ですが縄跳びが出来ないのです。自分で縄を回して、その縄に合わせて跳ぶという作業が出来ない。真っ直ぐ上に跳ぶというのが無くて、右に左に跳んじゃう。ひとりでそうなのだから押して知るですが、10人並んでの縄跳びではみんながバラバラの動きで一度も跳べない。でも(フォーメーションとかを除く)単純な動きのサッカーをさせたら凄いのです。」
自分がやりたいことがあり、それに向かって純粋に真っ直ぐに走ったがそれが叶わないときに人は悲観したくなるものだが、拓先生は「考え方を変えるだけの問題、自分が目の前のことに対してどう見るかというだけの問題」であると語った。試験に2度落ちてしまったことも、野球を教えたくて、でも野球の要請が無かったことで体育の教師を育てる枠での派遣となったことも、僕の人生にとって絶対に意味があるのだと確信している。「例を挙げれば、その落ちた2年間でかけがえのない出会いに恵まれた。もし最初の年で落っこちずに派遣されていたならば、その出会いも無かったでしょう。その方々の色々な考え方などに触れ合うことで刺激をもらって、より深い考えをもつように成長出来た」(上原氏)。
最近では愛媛県の強豪校である済美高校が、安楽智大投手らレギュラー組の遠征中、残された2年生によって1年生への悪質なイジメ問題があり、8月9日から1年間という最も長い対外試合禁止処分を下された。あいつらだけがいつも試合に出て、俺たちは蚊帳の外。そのような考えでは仲間へはもちろん自分にとってただのひとつも、良いことは生まれない。野球はひとりでは出来ないし会社や組織もひとりでは成り立たない。その昔、中国の偉人が唱えたという人生不如意十中八九の教えは、人生が虚しいとか諦めが肝心とかいうことではなく、逆に言えば自分の考え方を変えることでいつも前向きに明るく生きていけるのだという拓先生からのメッセージだとも捉えられよう。このことをひとりでも多くの人が受け取って良き学生、良き社会人となってくれることを願って止まない。
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