上原拓先生のアフリカ(タンザニア・ザンジバル)便り
上原拓先生のアフリカ(タンザニア・ザンジバル)便り1
2014-09-11
「上原忠先生(糸満高校)から、拓先生の高校時代はかなりのやんちゃ者だったと聞いてます(笑)」
上原氏「試合の中で、相手スタンドからのヤジが凄かったのでついあることをしちゃって(笑)すいません、これ以上は(雑誌では)喋れません(笑)。」
「そうですよね(笑)。それで大学は日体大を選ばれた」
上原氏「投手の阿嘉がスポーツ推薦で日体大に行くけど、指定校枠があるからお前も行かないか?と神谷先生(現美里工野球部監督)が仰って下さって。体育の先生になるのが僕の目標の一つでもあったので、行かせてもらいました」
「日体大でも野球は続けてらしたのですか?」
上原氏「もちろん野球部に入ってましたが、部員数が250名ほどいて。試合に出してもらったことはないし、試合用のユニフォームに袖を通したことすら無かったです。3年生になると球場の中にすら入れなくて、アルバイトの日々でしたね。それから帰ってきて西原高校で事務職員から始めて。安慶田中学校のプール管理人をしている頃に採用試験に合格して大平特別学校へ行き、5年前に現在の具志川商業高校(以下具志川商)へ赴任しました」
「その具志川商で指導者として高校野球に携わっていくこととなったのですね」
上原氏「僕が来た頃から真玉橋先生が監督してらしたので、バスの運転手やノックなどアシスト(野球部副部長)として5年間一緒にやらせていただきました。当時部長を務めていらした當山先生(現那覇商教頭)と、生徒指導部で一緒になったのです。その新年会で昔の話になって、當山先生が20代の頃にニカラグアにボランティア活動で経済学を教えに行ったよと。2年間だったけど、行く前のそれまでと比べて視野が広がって良い経験になったと。そこで野球を教えたりしたのだけど、道具がないので沖縄から送ってもらったよとか。そんな話を聞いたのが2年目でしたね」
「それが今回の動機のひとつとなった?」
上原氏「一度外国へ出てみたいなと。向こうで培った経験を持ち帰ってきて、将来自分なりの色を高校野球へ活かせたら良いなという考えが芽生えましたね。初めは當山先生の話が頭にあったので、中南米ばかりに目が向いていたのですが、『アフリカと白球』という一冊の本と出会いました」
「どのような内容なのでしょうか?」
上原氏「アフリカは野球が全然行われていないという状況下で、一人の日本人が野球を普及させようとする実話です。この本を読んでこれだったら自分も出来るかも知れないなと。それからアフリカへと目線がシフトしていきました」
「アフリカで野球が普及していくとどのようなことが起こるのでしょうか」
上原氏「だいぶ先の話ではあるのですけど、例えばメイドイン・タンザニアのグローブが出来て、メイドイン・ケニアのバットが出来て、メイドイン・ガーナのボールが出来て。そのくらい普及したならば、野球がひとつの産業になると。そうなるとヨーロッパから購入するなどのお金が現地に入ってくるばかりでなく、雇用も生まれる。ご存知の通りアフリカは貧困の地ですが、その貧困を解消する手立てのひとつとして、野球がその可能性を秘めているのではないかという考えの下、NPO法人アフリカ野球友の会という団体があります」
JICAとは日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国国際協力を行っている機関のこと。「全ての人々が恩恵を受けるダイナミックな開発」というビジョンを掲げ、多様な援助手法のうち最適な手法を使い、地域別・国別アプローチを組み合せて、開発途上国が抱える課題解決を支援していく活動を行っている。
大学時代、余りもの部員の多さと厳しい上下関係に挫折。試合に出られる可能性の低さに目を背けて逃げていた自分がいたという拓先生は、今は後悔しかないと正直に語る。誰もが一度や二度はそういう壁にぶつかり、自分を否定したくなくてもがき苦しむのではないだろうか。タンザニアで培った経験を持ち帰ってきて、将来自分なりの色を高校野球へ活かせたら良いなという上原氏。本人にしか伝えられないことがあると信じて現活動に励んでいる。そんな上原氏の姿は、今の高校生や大学生にも何かしら感銘を与えることだろう。野球大好きでは、次回以降も上原氏とのインタビューの中で出てきた興味深いお話を紹介していきます。
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