大城卓三

大城卓三

東海大学全国制覇の原動力。全日本大学野球選手権大会MVP

2014-07-11

2014年6月10~15日に開催された、第63回全日本大学野球選手権大会において優勝の原動力となり、最高殊勲選手と首位打者に輝いた、東海大学の大城卓三選手にインタビューを行いました。

五月晴れ(梅雨の間の晴れ間)の中、秋のリーグ戦に向け練習に勤しんでいる中、貴重な時間を割き、インタビューに答えてくださいました。

到着してまず目に入ったのは、素晴らしい野球環境です。大きく、手入れの整った専用球場と、室内練習場。そして、球場に隣接する合宿所。さすが、全日本大学野球選手権大会で優勝するのは、桁違いであると圧倒されました。更に、約束の時刻からかなり早く到着し’受付に声をかけると、日曜日にも関わらず、何名もいたマネージャーの姉ぇ姉ぇが、宮古から来たおっさんに、元気一杯の笑顔で対応してくださりました。素晴らしい施設と、選手を支える素晴らしい人達。なるほど、これは優勝するべくして優勝したのだと思いました。

今大会を振り返って

大平「まずは、優勝とMVP受賞、おめでとうございます。」

大城「ありがとうございます。」

大平「今大会を振り返って、何か思いがあれば教えてください。」

大城「最上級生ととして挑んだ大会ですので、自分何かが率先して皆を引っ張る立場になったと言う点で、今まで以上に気合は入リました。」

大平「なるほど。今大会、首位打者とMVPと言う2冠に輝いた訳ですが、調子的にはどうだったのでしょうか?私が見る分には、いつもの卓三さんの実力をいつも通りに出せたと感じました。当然調子は悪くは無かったと思うのですが、その点はいかがでしょうか?」

大城「調子そのものは、非常に良かったですよ。ので、いつも以上の力が出たと思い ます。特に打撃では、バットが非常にスムーズに出たと思いました。」

大平「ありゃりゃ、失礼しました。守備でも、良い結果が残ったと思います。配球や捕球等。元々、卓三さんは強気な捕手だと思っていました。」

大城「ですね。自分でも、強気なリードをすると思います。」

大平「相手打者についてもそうですが、投手についても、例えば首を横に振られても、自分がこうだと思う配球は変えない、と。」

大城「そんな風に見えますかね。今回、投手はほとんどが下級生でしたので、首を横に振ると言うことは、ほとんど無かったと思います。ただ、ペンチで、直球が走っているとか、シュート回転しているとか、投手とは密に話し合っています。ので、ペンチを出た時点で、方向性は決まっているので、お互いが納得しているため、首を横に振らなかったのかな、と。確かに、上級生か出したサインに反対するのは、勇気がいると思いますが、そこに気を使うことを極力減らそうとは考えています。」

大平「そうですか。ベンチで、そんな詳細な打ち合わせをしていたのですね。」

大学生活について

大平「卓三さんが大学に入った時、東海大学には絶対的な捕手である伏見さん(現オリックス)がいましたよね。たぶん、大きな刺激になったと思うのですが、いかがですか?」

大城「伏見さんは、確かに絶対的な存在でした。近くに、あんな凄い選手がいるのは幸運であり、盗める所は全て盗んでやろうと思うのと、いつか追い越してやろうと言う、2つの感情を持っていました。ただ、当時の自分では、未だ未だ追い越すまでの実力は無かったと思います。ので、まずは実力向上。そのために、技術を盗むことの方に重点を置いていました。」

大平「その伏見さんもなし得なかった優勝とMVP受賞をしたのですから、凄いと思いますよ。」

大城「いやいや、伏見さんは自分の目標であり、超えたい高くて厚い壁です。野球をやっていれば、また、挑む機会もあるかと思うので、追い続けたいと思います。」

大平「他には、大学生活で何かありますか?」

大城「自分は高校から内地に来ていますから、生活面では、別段大きな変化は無かったと思います。あ、高校時代は、食べても食べても肉がつかなかったのですが、大学になってから、そこそこ肉はつきましたよ。」

大平「確かに。高校時代は、非常にほっそりとした印象がありましたからね。筋力やスタミナが増強され、正に鬼に金棒ですね。」

高校時代

大平「高校と言えば、卓三さんは東海大相模と言う、内地の高校に進学された訳ですが、これは、どんな経緯があったのでしょうか?」

大城「これはもう、兄(昌士さん)の影響ですね。兄が東海大相模に行っていて、『更に上の野球を目指し、将来野球で飯を食いたいなら、東海大相模に来い。』と。」

大平「なるほど。ご両親よりも、お兄様の影響なのですね。」

大城「でも、当時は中学生で何もわからない頃でしたからね。悩みましたよ。最終的には、自分で決めたのですが、兄の存在は大きかったですね。」

大平「卓三さんの同級生には、池原(現国士館)、島袋(現中央)、宮國(現巨人)と言う、高校時代投手3羽鳥と言われた人達がいるのですが、個人的には、それに劣らない捕手3羽鳥がいたと思っています。」

大城「沖縄で、ですか?はて?誰ですか?」

大平「無論、その内の1名は卓三さんですが、糸満の島袋(現国士館)と嘉手納の眞謝です。」

大城「島袋は、活躍は耳にしています。負けられないなと思っています。眞謝は、中学時代全国制覇していますよね。ので、中学時代は、別格だと思っていました。」

大平「当時や今、この2名と面識等はありますか?」

大城「いえ、全く。自分は、高校から内地に来ているので捕手は元より、沖縄の野球選手とは、そんなに親しく無いのですよ。試合の時に会ったりすれば、『よおっ。』って声をかけたりしますが、連絡を取り合ったりは、無いですね。先日、練習試合で我如古(現立教)に会って、ちょっとだけ話をした位です。」

大平「そうですか。でも、我如古とは甲子園以来の再会ですね。そうそう、実は是非聞きたいことがあって。甲子園の決勝戦で、興南と当たった訳ですよね。で、興南アルプスでは、ハイサイおじさんの大合唱だったのですが、それを対戦相手として聞いた感想は、どんなですか?」

大城「感想ですか。特に。『あぁ、ハイサイおじさんだな。』位ですね。」

大平「気合が入るとか、逆に、何か気まずいとかはありましたか?」

大城「いえ、気まずさは全く無かったですね。それよりは、気合が入って、元気になりました。昔っから聞いていた曲ですから。」

大平「それを聞いて安心しました。対戦相手にうちな~んちゅがいる時に、沖縄側のアルプスでハイサイおじさんで歌い踊っていながら、若干引っかかる物があったんです。でも、これからは、心置きなくアルプスで大騒ぎします。」

好投手の条件

大平「高校大学と、卓三さんは多くの投手と接して来たのですが、その中で、『こいつは凄い!』って思った投手はどなたですか?打者としてでも、捕手としてでも。」

大城「高校では、ずっとバッテリーを組んでいた一二三(現阪神)ですね。大学では、1年で入学した時に見た菅野(現巨人)さんですね。」

大平「ほほお。2名共剛速球投手ですね。卓三さんは、剛速球投手が好み?」

大城「いや、彼らの凄さは、剛速球を投げながら、非常に制球力に秀でていた所です。一二三の場合は、最後の夏の5月に、横手投げに転向したので、夏は球は速いがノーコンのイメージを持った人が多かったようですが、元来はとっても制球力が良い投手でした。」

大平「あ、私もそれ思っていました。2ヵ月ですからね。あそこまで投げられれば上々でしょう。」

大城「菅野さんは、直球も変化球も、捕手が構えたそこに寸分の狂いも無く投げ込むんですよ。で、あの剛速球ですよ。本当に衝撃的でした。」

大平「では、卓三さんが理想とする投手の条件は、制球力である、と。」

大城「それはその通りです。だって、どんなに速い球を投げることができても、ストライクが入らなければ、立っているだけで1塁に行けますからね。特に自分は捕手ですから、リードする上でも、制球力は重要です。」

大平「球速はそこそこでも、きっちりとした制球力があれば、相手を充分抑えきれる、と。」

大城「はい。自分はそう思っています。」

今後の目標

大平「月並みな質問ですが、今後の目標を教えてください。」

大城「まず、大学選手権を征し、これからは追われる立場になったと思います。しかし、その逆境を克服し、まずはリーグ連覇が、最初の目標ですね。」

大平「なるほど。」

大城「で、次が関東大会で、そこを勝ち抜くと、11月の明治神宮大会があるので、そこで優勝することが大学としての、最終目標ですね。」

大平「おお!春秋連覇ですね。」

大城「無論、難しいことはわかっています。でも、難しいからこそ、やりがいはあるかな、と。」

大平「いや、この恵まれた環境と、素晴らしい人達を見ると、連覇の可能性は高いと、期待しちやいますよ。」

大城「期待されている人は多いと思うので、その期待に沿えるように、頑張ります。」

大平「当然、うちな~んちゅの多くが期待していますよ。連覇もそうですが、連続MVPを。」

大城「過剰な期待ですね。」

大平「いやいや、卓三さんなら。で、来年3月には、大学を卒業する訳ですが、当然我々うちな~んちゅは、卓三さんがプロでガンガン活躍し、連日テレビや新聞で報道されることを望んでいます。未だ、プロ志望届けを出す前ですから、余り詳しい話はできないかと思いますが。」

大城「そうですね。」

大平「ですが、卓三さんの同級生は、興南が優勝した年でもあることから、ドラフトで多くのうちな~んちゅが指名されることを我々は期待しています。そして、うちな~んちゅバッテリーを組むも良し、うちな~んちゅ対決をするも良しだと思います。」

大城「指名されますかね?」

大平「私の思う『プロ』の条件は、客を呼べることです。100連敗しても、スタンドが満席だったら勝ちですし、20勝投手でも、スタンドがガラガラだったら負けだ、と。」

大城「プロは厳しいですからね。自分も、プロに行くかどうかはさて置き、結果を残しつつ、沢山の人に試合を見に来てもらえるような選手になりたいと思います。」

大平「これからも活躍を期待しています。ありがとうございました。」

高校時代から注目していた憧れの選手へのインタビューと言うことで、1ファンとして聞きたい内容に終始してしまいましたが、うちな~んちゅ同士が、内地で共通語を使って話すと言うのは、何となく滑稽に感じました。しかしそれは、それだけ卓三さんは内地に馴染んでいる証拠だと思いました。特に、卓三さんの場合、187cmの身長と、切れ長の目と言う、およそうちな~んちゅとはかけ離れた容姿をしていることもあり、苗字を確認しない限り、うちな~んちゅとはわからないかと思いました。野球選手としても1流ですが、その容姿から、仮にファッションモデルや役者になったとしても、充分1流となれると感じました。天は2物も3物も与えたと、ご先祖様に嫉妬する程。また今回、取材で始めて話しをした筆者にもすぐに伝わった優しい雰囲気は、投手をリラックスさせ、多くの野球ファンを沖縄ファンを魅了する物だと思います。

東海大学野球部練習場は、羽田空港から2時間程と、若干遠いものの、東京近郊に行く機会があれば、是非足を延ばすことを勧めます。男性は、その高度な練習に酔いしれ、女性だったら、イケメン揃いの部員に魅了されるハズ。筆者も秋の大会の前に、再度訪れようと思いました。そして、秋の大会には、健二さんと2名で、更なる大活躍をすることを期待しています。チバリヨ~、大城卓三!

大城 卓三(おおしろたくみ)

那覇市出身

首里中→東海大相模→東海大学

高校3年の夏、甲子園準優勝

大学4年の春、全日本大学野球選手権大会優勝、MVP

兄は、現西部ガスの大城昌士と、同じ東海大学野球部内野手の大城健二

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