『肘下がり』と姿勢と股関節について
『肘下がり』と姿勢と股関節について
2017-01-15
投球時に肘が下がってしまう要因はたくさんありますが、今回は肘下がりと股関節の関連性をお伝えしたいと思います。
『肘下がり』の定義とは、右投げの場合、左足を上げ、その左足が前についたときから、右の前腕が一番床と水平に近づくところにて、両肩を結んだラインよりも肘の高さが上がらないフォームを指します。
『肘下がり』の要因の一つに、テイクバック(専門用語ではコッキングフェイズ:Cocking Fhase)の時に、肩甲骨が脊柱に近づく動き(専門用語では”肩甲骨の内転”)が起こりにくくなっていることがあるとお話しました。
関節の周りの組織が固くなり、動きが制限されると可動域制限といい、股関節の筋力が落ちることを筋力低下と表現します。股関節が可動域制限や筋力低下をきたすことで骨盤・脊柱に影響を及ぼし、投球時の障害を引き起こす要因となりえます。
前回お話したとおり、脊柱が伸びないと肩甲骨の内転がしにくくなります。脊柱は骨盤から繋がっており、脊柱は股関節の影響を受けます。
股関節が球型の関節ですので、本来多方向に動くことが可能です。しかし、体の関節の中で股関節の動きが大きい分、役割も多く、股関節が動きにくくなることで、他の関節に負担をきたすことがあります。
股関節の屈曲(曲がること)が不十分だと、脊柱の伸展がしにくくなり、その影響で肩甲骨は内転しにくくなります。これが『肘下がり』の一つの要因となりえます。
ハーフスクワットでいうと、写真①の左の姿勢では、股関節の屈曲が十分で脊柱も伸展できていますが、右のようになっていると、脊柱は伸展しにくく、その結果、肩甲骨が内転しにくくなり肘下がりになる可能性があります。
ハーフスクワットの姿勢では、スネ・ふくらはぎ(下腿という)の角度と脊柱・体幹の角度が同じで平行になることが理想とされています。
過度に腰が反っていたり、膝が前にいきすぎているのは股関節が屈曲していないので、股関節の動きが必要です。可動域なのか、筋力なのか、動かし方なのかは探さないといけない部分はありますが、まずはこの姿勢ができるか、この姿勢を保持できるかをやってみてください。
自分の体がどうなっているかを自分で気がつけることが一番大切ですが、確認しないとわからない部分は、鏡や写真(今はスマートフォンやタブレットなど)を撮ってもらい、自分の体がイメージ通りに動かせているかを見てみてください。
股関節の可動域・股関節の筋力・自分がイメージしたように体を使えていないこと、どれかでも不十分だと、このハーフスクワットの姿勢にて股関節の屈曲が不十分となり、脊柱の伸展がしにくく、投球時の『肘下がり』に繋がるかもしれません。
股関節は多くの筋肉で囲まれており、ハーフスクワットをうまく行えない問題を一つに絞ることは難しいです。今回は、股関節の可動域を確保するためのストレッチと股関節をうまく使えるようにする運動をお伝えしますので、予防やパフォーマンスアップとして使用してみてください。
2. 股関節前面のストレッチ
股関節のストレッチは、写真のように片方の足を前、反対の足を後ろに伸ばします。後ろに伸ばした足の股関節の前面が伸びるようにストレッチします。後ろに伸ばした足と同じ側の肘を床につき、肘に体重を乗せるようにすると後ろに伸ばした足の前面が伸びやすくなります。
3. お尻(臀部)のストレッチ
片方の足を前にし、その足の膝は90°程度に曲げます。もう一方の足は後ろに伸ばします。前の足を抱えるようにし、お尻周辺が伸びるようにストレッチします。
4. 四つ這いでの前後運動
四つ這いになり、脊柱は丸めすぎず、反りすぎず、真っ直ぐにします。脊柱はそのまま動かさないようにして、体を前後に動かします。この時に股関節と肩関節だけを動かすようにし、特に股関節を曲げ伸ばしすることを意識します。股関節だけを曲げて後ろに動けるようになることで股関節の動かし方を体に覚え込ませます。
てるクリニック院長 照屋 均 さん
てるクリニック技師 我謝 幸夫さん
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