股関節周囲が痛くなる疾患『骨盤裂離骨折』

股関節周囲が痛くなる疾患『骨盤裂離骨折』

2015-11-15

スポーツをする成長期の子供に起こる股関節周囲の痛み骨盤裂離骨折。その骨盤裂離骨折について「てるクリニック」院長の照屋先生と同クリニック放射線技師である我謝技師とのお話しを通して説明します。

【骨盤裂離骨折とは】

G :骨盤裂離骨折は一般的にあまり聞き慣れない疾患だと思いますが、骨盤裂離骨折とはどういう疾患なのか具体的に教えてください。

T :骨盤裂離骨折は大人になる前の骨端線が残る成長期の子供に起こるスポーツ障害です。走ったり蹴ったりする動作の中で骨盤部に付着する筋肉が牽引を繰り返す事によって付着部の成長軟骨(成長期の子供にある特有の軟骨)が裂離骨折してしまう疾患です。

骨盤裂離骨折は骨と筋肉の成長差が主な原因と考えられます。分かりやすく言うと、筋肉の力に骨の強度がついていけず付着部の骨が剥がれてしまう骨折の事です。

G :骨盤裂離骨折の特徴や好発部位を教えてください。

T :骨盤の中でも縫工筋・大腿筋膜張筋が付着する上前腸骨棘、大腿直筋が付着する下前腸骨棘、ハムストリングが付着する坐骨結節が好発部位となります(画像1参照)。

ダッシュやジャンプ時の瞬間的な動作では縫工筋が強く収縮する事で上前腸骨棘に負荷が掛かります(画像2参照)。

キックなどの動作では大腿直筋が収縮するので下前腸骨棘に負荷が掛かります(画像3参照)。全力疾走や跳躍ではハムストリングが収縮するので坐骨結節に負荷が掛かります。

その繰り返しや強烈な負荷によってその部位の裂離骨折が起こる事があります。この疾患はハードな練習やオーバーユースにて起こる傾向にあります。

G :骨盤裂離骨折の好発年齢や症状を教えてください。

T :好発年齢は12~18歳で男子に多い疾患です。サッカーや陸上など走る事が多いスポーツで好発します。症状としては徐々に痛くなるのではなく突然股関節周辺部が痛くなる事が特徴で比較的強い痛みを伴うため歩く事も困難になる場合があります。

【検査と診断と治療方法】

G :病院ではどのような検査を行うのですか。

T :行っているスポーツ・痛む動作や圧痛がないかをまず確認をします。さらに骨盤のレントゲン撮影を行い骨折の有無を確認。場合によってはCT検査やMRI検査を行う事もあります。それにより骨折のずれの程度や炎症の度合いを詳しく調べることが出来ます。

G :骨盤裂離骨折と診断された場合はどのような治療を行うのですか?

T :多くは保存療法で経過を診ます。成長期の障害であるため早期での骨癒合が期待できるので保存療法で治療は充分可能です。当然その間の4~6週間はスポーツ禁止とします。

まれに骨折部の離開が大きく(骨が元の位置から大きく離れた状態)保存療法では癒合が難しいと判断した場合は骨片をスクリューなどで整復固定する手術を行う場合もあります。

G :この疾患に対する予防や注意点はありますか。

T :骨盤裂離骨折は筋肉が硬い方に起こりやすいという傾向があります。そのため予防には運動の前後に骨盤周囲や股関節のストレッチを充分に行う事がとても重要だと考えます。

また、股関節周囲で長く痛みが続く場合は我慢せず早めに整形外科を受診することをおすすめします。

G :ありがとうございました。

T:照屋先生 G:我謝技師

てるクリニック院長 照屋 均 さん

1962年生まれ。那覇市出身

平成13年3月天久新都心に「整形外科てるクリニック」を開院。スポーツドクター専門医。肩関節とくに投球障害に関する専門医。

平成16年2月社会人硬式野球チーム「てるクリニック」を立ち上げる。現在、野球部部長兼投手として選手育成に努めている。

てるクリニック技師 我謝 幸夫さん

放射線技師としててるクリニック開院時から勤務

沖縄MR研究会世話人。沖縄MRPユーザー会を立ち上げるなど整形分野のMRI検査に力を入れている。

てるクリニック硬式野球部では副部長

 

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