成長期の子供に起こる肘の裏の痛み『肘頭骨端障害』

成長期の子供に起こる肘の裏の痛み『肘頭骨端障害』

2015-08-15

成長期の子供に起こる「肘頭骨端障害」について「てるクリニック」院長の照屋先生と同クリニック放射線技師である我謝技師とのお話しを通して説明します。

【肘頭骨端障害とは】

G :野球をする成長期のお子さんで肘の痛みを訴える場合は内側靭帯の損傷や外側の離断性骨軟骨炎などはよく聞く疾患ですが肘頭骨端障害とはどういう疾患なのか具体的に教えてください。

T:成長期の子供における投球による肘関節の障害はご指摘の通り内側や外側で見られることが多いのです。ですが肘の後ろが痛くなる疾患もあります。それが肘頭骨端障害です。肘頭骨端損傷は聞きなれないと思いますが、投球によって生じる障害です。少年野球の特に投手に多く見られます。

G :この疾患の原因・特徴を教えて下さい。

T:この肘の骨端線の損傷は、成長期に行う「肘関節の過剰な伸展」を繰り返すことによって起こります。肘頭骨端障害は、骨端炎の状態で痛みが出るので比較的自覚しやすい疾患です。

この障害は、70%程度の割合で内側側副靭帯損傷が合併していることが報告されています。

つまり、靭帯損傷を診断したときは肘頭の障害の有無もチェックも必要となります。

肘のレントゲン写真(画像1~3)を見てみると、尺骨の肘関節側には肘頭と呼ばれる部位があり、成長期の頃の肘には肘頭付近に骨端線という成長を司る軟骨の層もあります。

ちなみに骨端線は大人の骨にはありません(画像1・2)。

また、肘を伸ばしたときに肘頭が収まる上腕骨のくぼみがあり、それを肘頭窩といいます。投球動作においてボールをリリースした直後から肘が強く伸展(伸ばす)することにより肘頭と肘頭窩とが衝突し、それを繰り返すうちに骨端線付近に炎症などが起こる「肘頭骨端線障害」を引き起こすことになります。

レントゲン写真(画像3)では正常と比べて骨辺縁の不整が目立つ事が判ります。

【検査と診断と治療方法】

G :病院での検査について教えて下さい。

T:大体の骨端線損傷はレントゲン検査や超音波検査で判断できます。必要に応じてCT検査やMRI検査を行う場合もあります。

an class="label label-primary">G :骨端線障害と診断された場合はどのような治療を行うのですか?

an class="label label-success">T:この疾患は、一種の使いすぎによって生じる疾患なので、投球を休止することで症状は改善します。

一定期間の投球を制限するように指導し経過観察します。また、単に肘の治療だけでなく肩周辺のケアーなども含めて肘に負担がかからないようにリハビリで指導も行います。

G :この疾患に対する注意点はありますか。

T:肘後方に違和感や痛みがあった場合は速やかに投球を休止して無理をせず安静にすることが重要です。

そして早めに整形外科を受診し正確な診断と適切な治療を受けることをおすすめします。

受診時の指導をしっかり守れば、痛みや損傷の度合いによっても若干異なりますが約1~2ヶ月程度で以前のように投球出来るようになると考えます。

G :ありがとうございました。

T:照屋先生 G:我謝技師

てるクリニック院長 照屋 均 さん

1962年生まれ。那覇市出身

平成13年3月天久新都心に「整形外科てるクリニック」を開院。スポーツドクター専門医。肩関節とくに投球障害に関する専門医。

平成16年2月社会人硬式野球チーム「てるクリニック」を立ち上げる。現在、野球部部長兼投手として選手育成に努めている。

てるクリニック技師 我謝 幸夫さん

放射線技師としててるクリニック開院時から勤務

沖縄MR研究会世話人。沖縄MRPユーザー会を立ち上げるなど整形分野のMRI検査に力を入れている。

てるクリニック硬式野球部では副部長

 

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