肘下がりと肩甲骨・座位姿勢について

肘下がりと肩甲骨・座位姿勢について

2016-11-15

前回は、投球時の『肘下がり』について、「てるクリニック」院長の照屋先生と同クリニック理学療法士である玉城さんに説明してもらいました。今回はその続きで、『肘下がり』と肩甲骨・座位姿勢について説明してもらいます。

投球時に肘が下がってしまう要因はたくさんありますが、今回は肩甲骨と背骨(脊柱)と座位姿勢についての関連性をお伝えしたいと思います。

『肘下がり』の定義とは、右投げの場合、左足を上げ、その左足が前についたときから、右の前腕が一番床に水平に近づくところにて、両肩を結んだラインよりも肘の高さが上がらないフォームを指します。『肘下がり』の要因の一つに、テイクバック(専門用語ではコッキングフェイズ:Cocking Fhase)の時に、肩甲骨が脊柱に近づく動き(専門用語では”肩甲骨の内転”)が起こりにくくなっていることがあるとお話しました。

では、なぜ右の肩甲骨の内転が起こりにくくなるかをお話したいと思います。肩甲骨が内転する際には脊柱を反らす(専門用語では”脊柱の伸展”)動きがあると、肩甲骨は内転しやすくなります。逆に背中が丸まったままだと脊柱が曲がり(専門用語では”脊柱の屈曲”)、肩甲骨は内転しにくくなってしまいます。

どちらの姿勢でも一つの姿勢に固まることはいいことではありません。普段何気なく座っている時に背中が丸まったままの姿勢をとり続けると、脊柱の伸展と肩甲骨の内転がしにくくなるため、その姿勢にて投球動作を行うとテイクバック時に『肘下がり』に繋がり、肘に負担をかけやすくなってしまいます。

その負担が一度や二度では肘が故障するところまではいかないかもしれませんが、それが繰り返されることによって、肘の障害に繋がることが考えられます。

例えば、学生やデスクワークが多い方の場合、1日に何時間も丸まって座っていることで、肩甲骨の内転がしにくくなり、投球時のテイクバックにも悪影響を及ぼす可能性があります。

学生などでテスト期間中、部活が1週間程度休みになり、その部活再開直後に肘が痛くなったり、調子が狂う選手もいます。その場合、普段よりも座っての勉強時間が多くなり、丸くなったままの姿勢を続けたため、その影響で投球動作への不調に繋がることが考えられます。

背筋が伸びすぎているのも異なる問題を引き起こすことがありますが、背中が丸まっている姿勢で固まり、動きにくくなることで、上記のような問題を引き起こす可能性があります。

予防方法として、定期的な体操がありますので、ぜひ行ってみてください。

猫背のような姿勢になりやすい方は、勉強やデスクワークなどで座位姿勢が長くなった際に、①背伸びをしたり、②背伸びをしたまま左右に伸びたり、③手を後ろに回して肩甲骨を内側に寄せるように動きにてリセットすることをおすすめしています。

他にも個人に合わせての運動は多種多様に渡りますので、少しずつ紹介していきたいと思います。これらの運動を行なった際に普段経験しないような痛みを伴う場合は中止し様子を見てください。

普段の生活習慣から気をつけて、怪我なく野球を続けていきましょう。

てるクリニック院長 照屋 均 さん

1962年生まれ。那覇市出身

平成13年3月天久新都心に「整形外科てるクリニック」を開院。スポーツドクター専門医。肩関節とくに投球障害に関する専門医。

平成16年2月社会人硬式野球チーム「てるクリニック」を立ち上げる。現在、野球部部長兼投手として選手育成に努めている。

てるクリニック技師 我謝 幸夫さん

放射線技師としててるクリニック開院時から勤務

沖縄MR研究会世話人。沖縄MRPユーザー会を立ち上げるなど整形分野のMRI検査に力を入れている。

てるクリニック硬式野球部では副部長

 

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