野球が好き、審判が好き

糸数一男

2016-10-15

昭和31年11月生まれ。沖縄県硬式野球連盟審判員。沖縄県野球連盟那覇支部審判員。 学童野球の真和志ヤンキース、識名ブルファイターズで監督を務め、県立南部農林高校で外部監督として3年間野球部監督を務める。40代中頃から本格的に審判として活動をはじめ、現在では、ほとんどの週末を野球場で過ごす。

「とにかく野球が好きで、審判が好き」。そう話すのは沖縄県硬式野球連盟に所属し、社会人野球と大学野球の試合で審判員を務める糸数一男さん。

昨年10月には明治神宮野球大会九州代表を決める九州大学野球選手権大会で福岡ドームのフィールドにも立った。

また、硬式野球だけではなく、沖縄県野球連盟の那覇支部にも所属して軟式野球の審判も務めており、一年間、年から年中、特に週末のほとんどは、審判としてグランドに立っている。

とにかく野球が好きで、ずっと野球に関わってきた。最初に審判をしたのは、学童野球の監督を務めるようになったとき。学童野球の場合、チームから審判を出さないといけないので必要に迫られてのことだった。

きちんと教えてくれる人もなく、我流で審判を務めた。初めて硬式野球の審判をしたのは、息子の高校時代。息子が入部した高校の野球部の監督に練習試合での審判を頼まれ、自ら硬式の審判用具を揃えた。

その後、自らの出身校でもあり息子も所属した南部農林高校の野球部監督を3年間務めた後、本格的に審判の道に進む。軟式野球の県野球連盟那覇支部の審判員からスタート。一日4試合、5試合と審判に立った時期もあった。

軟式野球の審判を始めて2年ほど経った頃、硬式野球に魅力を感じて、オープン戦などで硬式野球の審判も経験するようになる。そして、正式に硬式野球連盟への審判員の登録となった。

硬式の社会人野球はアマチュアではあるが、選手は生活をかけてプレーをしている緊張感のある場所。選手からも観客からも納得されるジャッジが求められる。

一つひとつの動き、ボールの追い方、見る場所、全体の動きなど、硬式の審判員になって教えられることが多かった。

九州の審判講習会でも徹底的に教えられた。

審判はルールを熟知し、ストライク、ボール、アウト、セーフの判定を下す。そして、試合中に、そのアウト、セーフを正確に判断するために必要になるのがメカニクス。試合中に起こる状況により,それぞれの審判の動きやフォーメーションのこと。

硬式野球は、4審制で4人の審判がクルーを組み、ベースが空いたときに誰がカバーができるか、クルーで助け合いながら試合を進める。このメカニクスについて糸数さんは、本を読んで勉強したり、講習会でも学んだが、実際の現場で経験したり、先輩に叱られて、体で覚えることが多かったという。

特に県外へ派遣されたときに学ぶことが多かった。

普段と違うメンバーで試合前に打ち合わせを行い、試合が終わったら控室で試合を観ていた審判員も加わり反省会。今日の試合は、何も問題はなかったと思っていても、指摘されることもあった。

メカニズムの難しさ、自分のミスにも気がつかない場合もあった。硬式野球の審判員の経験が10年を超え今は、4審制で自分が動いたときにカバーが来ているかなと周囲の動きも確認できるようになってきた。

少しずつ、良い審判員に近づいて来たかなと感じている。

野球の審判は、何もなくて無難に終わるのが、一番良いが実際にはミスは付き物。だからこそ、同じミスを2回やらない努力をする。

そして、県外に行ったときに受けた指摘や失敗談は周囲にも後輩にも機会があれば伝えるようにしている。

「こういうことがあったから、お前らはやるなよ」と。糸数さんは、ミスをしたことを本人が分かって、次はやらないように審判すればいいと考える。

だから、注意されると素直に反省し、同じ場面で同じ失敗をしないように心掛けて、似たようなプレーが起きたときに、きちんとこなすことができたときは、自分なりに満足し、自分を褒める。糸数さんは審判として正確なジャッジを下すための基本は、良い位置取りをすることと待ち受けて見ることだという。

見る位置が悪いと選手や観客が納得しない。そして審判員は歩きながら、走りながらプレーを見て判定を下してはいけない。そのためには素早く判定を下せる位置に到達し、これから起こるであろうプレーを待ち受けなければならないという。

そして、コールのタイミングは、あわてない。急いだら失敗する。しっかりと確認して、余裕を持ってジャッジができるようになったとき、少しずつ良い審判ができるようになる。

審判としてグランドに立つからには、試合に臨む姿勢も大切だと考える。試合開始には、きれいな恰好で背筋を伸ばす。

ぐしゃぐしゃなズボンではグランドに立てない。ズボンから、シャツ、靴をきちんとする。審判当日は、ズボンは自分でアイロンをあて、きれいに折り目をつける。

審判としての威厳も必要であると同時に、身を引き締めて、一生懸命にプレーする選手に対して失礼のないよう、きっちりとした恰好、姿勢で審判を行う。「糸数審判がアウトって言うなら仕方がない」。そう選手に信頼してもらえる審判を目指している。

審判には当然、正しい正確なジャッジが求められるが、試合中に判定をめぐるトラブルが起こることは避けられないのも事実。そのよなトラブルが起こったときに、適切な処理をするのも審判。相手が納得するきれいな処理ができるかどうかも重要となってくる。

硬式の社会人野球はレベルも高い。そのレベルの高い選手たちの動きを間近で見ることができるのが審判。「見ているだけでなくジャッジをしなくてはいけないのですが、レベルの高いプレーを間近で味わえるのも硬式野球の審判の魅力の一つ」と話す。

糸数さんは本当に野球が好きで審判が好きだと自分で感じている。両目の白内障の手術も受け、審判を続けたいために昨年末には脊柱間狭窄症の手術も受けた。

自身が走れなくなって硬式のスピードに追い付けなくなり、しっかりとした位置取りができなくなったときが硬式の審判を降りるときだと考えている。

しかし、その後も学童野球や還暦野球などの審判は続けていきたいと思っている。「生涯審判をしていきたい。選手に嫌がられるまで、目が見える間は審判をやりたい」と笑った。

 

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