都市対抗野球大会へ、審判員で沖縄から初出場
審判員 山口順市さん
2014-07-11
都市対抗野球大会へ、審判員で沖縄から初出場
7月18日から開催される第85回都市対抗野球大会に沖縄県硬式野球連盟審判部の山口順市さんが審判員として初出場する。これまでの九州大会の実績などが評価され九州地区野球連盟から指名された。今回は、九州地区連盟からの唯一の派遣審判員として東京ドームでジャッジを務める。沖縄の審判員が都市対抗野球に派遣されるのは初めてのこと。
経験を積ませてくれた先輩方に感謝
アマチュア最高峰の大会で審判に立てるということは名誉なこと。九州地区連盟、県連の役員の皆さん、家族や職場のみなさんに感謝するとともに、沖縄から初めての派遣なので次につなげられるようにジャッジを務めたい」と話す山口さん。 沖縄から初めて都市対抗野球に派遣されるに至るまでは、沖縄県硬式野球連盟の強い後押しがあった。「若い人を育てないといけないという県連の考え方があったと思います」と山口さん本人が話すように、県連では山口さんにオープン戦も含めてかなりの試合数を経験させた。そして年3回開催される九州大会と九州で行われる審判講習会へ、この3年間ずっと山口さんを派遣した。「場数を踏ませてもらいました。そこに立つ数が多ければ多いほど審判としての技量が身につきますから」。
都市対抗野球九州予選、全日本選手権九州予選、そしてJABA九州大会と大きな3つの大会に参加することで、九連の審判長をはじめ、九州のベテラン審判員の方から直接指導が入る。それが大きかったという。「県連の役員、九州の審判部長をはじめ、九州各県の指導してくださった先輩審判員の方々には本当に感謝しています」
社会人野球のオープン戦で審判に立ち、虜に
山口さんが、審判員としてスタートしたのは学童野球の審判。息子が少年野球を始めたのがきっかけだった。「最初の頃は息子もやっているし恩返しをしないといけないと気持ちでやっていました」と山口さん。息子が入部すると父兄として審判に立つようになり、息子の卒業後もチームにコーチとして残ったことから、学童野球の試合でジャッジを務めていた。ちょうどその頃に社会人野球の試合で審判に立ったことが、山口さんの意識を大きく変えた。「学童の審判をしていたので、硬式野球連盟の方から社会人野球のオープン戦の審判を手伝ってもらえないかと誘われました」。そしてグランドで審判に立つとハイレペルなゲームでジャッジをすることに審判の魅力を感じた。「オープン戦が最初でしたが、やっていると楽しくて。あれから、はまりました(笑い)」。山口さんは審判の虜になった。
先輩方の俊敏な動きに愕然。一歩目の判断の大切さを学ぶ
本格的に硬式野球の審判に関わるようになると、山口さんは先輩審判員の動きに追いつけない自分に愕然となる。「最初、硬式の審判をやるようになったときに一番驚いたのは、先輩審判員の俊敏な動き。打球に反応してポジションを移動するときに、先輩方は行けているのに自分は半分とか3分の2しか行けていない、なぜ先輩方は同じ時間であそこまで行けるのかと。60歳近い先輩方があれだけ走れて、20歳も若い自分がなぜできないのか。走るのも自分の方が早いはずなのに、先輩方が自分より動きがいいというのは、なぜなのか、何か違うのだろうと考えさせられました」。そこで気付かされたのが、一歩目の打球の判断が全然違うということだった。「打球、ボールに対する判断が違うということなんですよ。やはり経験の差だと思いましたが、それを教えてもらえたのは非常にありかたいことでした。打球に対する判断がまだ甘いのでないかということをずっと考えましたね」。
プレーが行われると思われる現場に早く行くと、そこからジャッジに対する余裕が生まれるという。いっぱいいっぱいで行くとボールが来たときに動けない。余裕を持っていくとボールに対応できる。「ボール、ランナー、野手がいて審判は真ん中だよいつも言われました。この間でしかプレーは行われないのだから、どちらかに偏ったところにいれば見えていないと言われるぞと。そのためにも余裕を持って行っておかなければならない。そこから送球の方向によって右に移動するか左に移動するか判断する。そういうことは言われます」。懸命に行っても間に合わないときもあるというが、先に行って、そこから送球に対して一歩動いて確実に見てジャッジを下すことを心がけるようにしているという。一歩目の大事さを、山口さんは「それを続けてやっていくと、立ち位置が多少ずれていても修正できるというのが、最近、実感できるようになってきました」という。「今だとたぶんいっしょぐらいに行けるかなと思いますけど。でも・・・ひょっとしたらまだ一歩足りないかもしれないですね」。向上心は尽きない。
審判として大切な立ち位置
これまでに一番指導を受けてきたのが判定をするための立ち位置だという。単にジャッジするだけのたち位置だけではなく、次のプレイを考えてどこまで移動しておくのかという「立ち位置」が非常に指摘されるという。例えば、一塁塁審でも打球の行方によっては二塁や本塁もカバーしなければならない。山口さんにはずっと頭の中に残る苦い思い出がある。初めて九州に派遣されたときのこと、「穴が開いたんですよ。そこをカバーしきれなかった、そこのプレーのジャッジが遅れて本塁で点が入ったんですよ。私があそこで、あの場面でジャッジしていれば、見ていれば、カバーをしていれば、そういうことにならなかったと思うことだったので、それは審判としていてやってはいけないことでした」。 県連の期待もあって九州に派遣されたのに、日頃指導してもらっている先輩への申し訳な吉、自分へのふがいない思いが募った。「そこからですね、もっと1試合のゲームの中で集中するようになりました。オープン戦でもなんでもですね。硬式は試合数が少ないので、その中でいかに技術を高めるためにどのようにしてやっていくか。そういう意識がでてきました」。山口さんは球場に行くとと自分が担当する試合以外の時間を審判室で過ごす。「審判室では、みんなで審判の動きの話ばかりしているんです。それは九州へ行っても同じ。そこで、いろいろな人の話を聞いています。僕はあそこだと思う。僕はこっちだと思う。もっとボールに近づいてもいいんじやないかなどと、3人いると3入の考え方がある。それを間いて自分で一番いいと思うことを取り入れています。あの動きがおかしいだろと単に言い合うのではなく理論的に話をするので、そういう話をそばで聞いていていろいろと勉強になりますね」。他のゲームをみながら皆で意見を交換するという。「九州に行ってもできるだけ審判室から出ないようにしています。九連の審判部長や、先輩たちの話を間いていて面白くて勉強になるので。そういうところがプラスになっているのかな」と山口さんは振り返る。
「硬式は試合数が少ないのですが、逆に1試合の中できっちりやろうという集中力ができてくるし、派遣に行ったときに指導してもられるので、プラスに捉えています」と話す山口さん。真夏でも最初から全力で3時間集中する。球審だと内野ゴロを打ったときには一塁にカバーで走る、外野ヘフライが上がると一塁や三塁に走る。塁審だとアウトカウント、ランナーの状況を頭に入れて、どのような攻撃型が行われるのかを想定して準備をする。バントなのか、エンドランなのか、その時に自分はどう動くのか。「それは非常に今の自分の中ではできているのかなと思います」。社会人野球は、選手も必死だ。プロではないが生活をかけて一球一打プレイをしている。「セーフ、ストライク、ボールというのはできて当たり前なので、試合に集中してきっちり勤くことを心がけています」という。
いよいよ東京ドームヘ
奇しくも取材の前日に日本野球連盟から都市対抗野球大会の審判手配と審判員パスが自宅に届いた。「実感が湧いてきましたね。昨日は家に帰ると気合が入リました(笑い)」と山口さん。山口さんが東京ドームに立つのは、7月24日第3試合の3塁塁審、25日第1試合の1塁塁審26日第2試合の2塁塁審。九州を代表して、ましては沖縄からは初の審判員として派遣される。プレッシャーはある。それでも「東京ドームでやったことないので楽しい気持ちでいきます。九連の先輩からもドームは緊張するところじゃないよ、楽しんでこいと言われています」。大切なのは立ち位置。「なぜいつのまにかこの 人こっちにいたのと思われるのが上手な審判と思っています。だから動きをちゃんとして、正面に入ってジャッジをちゃんと見せることができれば良いと考えています」。試合でアウト、セーフの判定は注目するが、試合の中での審判の動きを見ている人は、ほとんどいないと思う。正確なジャッジは下すために、山口さんは東京ドームでも一歩目に集中する。
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