野球が好きという気持ちが審判を続けさせる
眞榮田義幸さん
2015-11-15
「審判がというよりも野球が好きだから続けられていると思う」。そう話す眞榮田さんは、今年で審判歴20年を数える。
小学校で野球を始めたものの、中学では野球部に入部せず、高校野球も入ってすぐに退部。
「でも本当は野球はやりたかった。野球に関しては悔いが残っていた」という眞榮田さんは、高校卒業後に、軟式野球にのめり込み、週末は野球優先の生活を過ごしていた。
そんな眞榮田さんが審判の道を歩み始めたのは30代前半の頃。当時、自ら所属するチームが早朝野球の大会へ出場するようになり、チームの担当として早朝野球の審判を手伝うようになった。
そうするうちに野球連盟那覇支部の審判も手伝うようになった。というのも早朝野球会場が瀬長島球場で、早朝野球の試合が終わると職域野球の試合が行われていたからだ。
軟式の大会も手伝ってほしいと声を掛けられ、「ちょっとだけやってみるか」と思ったのが、いつのまにか支部の正式な審判員としてグランドに立つようになった。
実は、眞榮田さんはその一年ほど前に高野連の審判員に加盟していた。審判員募集のポスターを目にして、野球がずっと好きだったことから審判を試してみたいと思い高野連の門をたたいた。
しかし、高校野球の試合に立つことなく、舞台を軟式野球へと移した。その後は、沖縄県硬式野球連盟の審判部の立ち上げ時に誘われ、社会人、大学の試合でも審判を務めるようになった。
社会人野球の九州大会など高いレベルの試合でもジャッジを行っている眞榮田さんだが、「僕にとっての審判は、社会人の上のトップであろうが、還暦のおじいちゃんプレーヤーであろうと関係ない。おじいちゃん野球、へたくそな野球でも、とにかく一生懸命やってる試合、そんな試合に立つのが好きなんですよ。」と話す。
ただ野球が好きという気持ちで審判を20年も続けている眞榮田さん。ひとつひとつの試合で楽しい審判ができたらいいと思っている。
それだけに、たまに目にする暴言を吐くような選手の抗議の仕方には「スポーツ憲章では、一番大切なことはマナーとうたわれている。
火花を散らすことがあるのも野球だけど、スポーツの頂点はマナーにあると思う。試合の中にマナーを入れてほしい」と苦言を呈する。
眞榮田さんは、アマチュア野球の審判員のことを自ら「真剣なボランティア」という。
職業でもなければ仕事でもないけれど手抜きはしない。真面目に審判に取り組んでいる。
それでもときにはミスは起こる。「自分が失敗したと思ったときは、飯が食べられないくらい残ることもある。勝敗にからむときは特にそう思ったりする」。
真剣なボランティアだからこそ、ミスを抱え込んでしまうこともある。しかし気持ちの切り替えも審判には大事な要素だ。
「2、3日で気持ちを片付けないと本当にきついと思う。仕事中もそのことを考えたり」。
プロ野球の審判に教わった。一試合の中でどこかに一つのクエスションが入る。どのみちパーフェクトというのはありえないので、ベターでいいんだと。決めるときにきちんと決めればいい。
一番向いていない審判は細かいことにこだわる人だと。
「僕たちも尊敬されるようにジャッジを一生懸命練習して、選手側も審判のことを理解していけたら、ほんとに楽しい野球ができるのではないかなと思う」。
今、眞榮田さんが課題に掲げるのが若手の育成。53歳の眞榮田さんだが審判員の中では年少組。
30代、40代の審判員がほとんどいないのが現状だ。「若い人が入りたくなるような、もう少し魅力のある審判の世界、自分の時間をつぶしても楽しいと思ってもらえるものをできるだけ作っていきたい」と考える。
楽しみながら審判の勉強をしようと学童野球の審判たちと勉強会も始めている。「自分が野球が好きだという考え方からすれば、審判もプレーヤーもお互いに楽しく野球ができたらなと思う。そのためにも、今後、選手たちがマナーを守り一生懸命プレーできるように若い審判員を育てることを考えたい」と話す。
審判として多忙な週末を過ごし眞榮田さん。再びプレーヤーとしても野球を楽しみたいと昨年グローブを新調したが、なかなか手にはめる機会がつくれない。
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