上原 拓先生のアフリカ(タンザニア・サンジバル)便り その17
2016-01-15
久保田スラッガーのご厚意
NPO法人アフリカ野球友の会からご提供頂いたユニフォームパンツに、街の土産屋で手に入るZANZIBARサッカーシャツが私たちの定番スタイルだ。本来なら着帽も義務付けたいところだが、帽子を購入する余裕のない家庭も多くなかなか定着していない。
試合になると友達や親戚から借りてきて着帽するのだが、形やデザインは皆バラバラだ。
ユニフォームの着方や選手としての振る舞いについても身に付けさせたい私にとって、チームユニフォームを揃えるというのは軽視したくない部分でもある。
そんな中、私のもとに嬉しい知らせが届いた。久保田スラッガーで知られる(株)久保田運動具店様が、ザンジバル代表チームの試合帽を無償提供してくれるというのだ。
これは、同社に勤める友人、小川久範氏の計らいによるもので且つ「日本の会社として、アフリカ野球の発展に少しでも貢献できれば」という有難い言葉も戴いた。
そのようなご厚意を喜び、帽子を一からデザインすることにした。そこで力を貸してくれたのが隊員仲間の松田光弘氏である。
彼の専門は写真技術だが、ポスターやカレンダーのデザインにも精通しており、私の無茶な依頼を快く承諾してくれた。私が注文したのは「ザンジバルっぽいもの」というあまりにも漠然としたものだったが、その仕上がりには目を見張った。
帽子全体は国旗色でまとめられ、シンボルマークの「Z」にはザンジバルを代表するスパイスであるクローブが使用されている。代表選手としての誇りやプライドを持ってほしいと、国旗や野球連盟のロゴまで組み込んでくれているのだ。そのデザイン画を東京へ送り、出来上がりを待った。
日頃、久保田スラッガー東京支店で店頭に立ちながら、プロ野球では横浜DeNAベイスターズと東京ヤクルトスワローズの2球団を担当する小川氏は、シーズン中で多忙な身であるのにも関わらずその作製に尽力してくれた。
そして大会の一ヶ月前、帽子が届いた。実際に手にとって見てみると、改めて大きな喜びが込み上げてきた。
こんなにも立派な試合帽を久保田運動具店様から無償提供して頂けたということはもちろんだが、それに加えて、選手たちの夢が目に見える形になったとも思ったからである。
日本の野球少年が侍ジャパンのユニフォームに憧れるのは、日本代表選手たちが国の名誉を懸けて世界と戦う雄姿を目にするからだろう。
しかし、ザンジバルにはそのような対象になるモノが無かった。そんな中、目に見えるモノとしてまず、この帽子が提供されたのだ。これからの彼らは、代表選手としてこの帽子をかぶるための努力を重ねるであろう。
12月の第3回タンザニア甲子園で、代表選手として登録できるのは15名のみ。最後の総仕上げへ向けた起爆剤にもなりそうだ。
今回の久保田運動具店様のご厚意は、ザンジバルを通してアフリカ野球界へ大きく貢献してくれたものだと考えている。WBSC世界野球ランキング(※)で1位となった日本、世界一国として、日本野球界が足並みを揃えて久保田運動具店様に続く野球普及行動を起こしてくれることを願ってやまない。
もともとは小川氏と私だけで行われていた話が、小川氏の心意気により役員から社長に伝わって会社が動いてくれた。よく、人間ひとりでは何もできないと聞くが本当にそうなのだろうか。人間ひとりのチカラは大きいと私は思う(上原 拓)。
個人的な話で恐縮だが、僕は中学校2年のとき、夏休みのほぼ全ての午前中をバイト(好意により伯父の職場で体験させてもらう)に費やした。
そのとき夢中になっていたのがゴルフなのだが、その道具をどうしても自分の力で手に入れたかったのだ。
アイアンだけのセット(約5万円)であったが、その新品を伯父の手から渡されたときの感動は今でも覚えている。何度か抱いて寝たものだ(笑)。
今回の拓先生の便りでの、彼らの笑顔はもちろん着帽したままの写真で、タグがついたままなのがお分かりだろうか。
拓先生曰く、新品だよという彼らのこだわりとのこと(試合前には外す)。これを読んでくれている方々にも、きっと似たような経験があったのではないだろうか。それは久保田運動具店にとっても同じことだったと思う。
ここまで大成長した企業でも、スタートは不安だっただろうし、その成長過程の中で、忘れられない思いがあったはずだ。だからこそ社長さんは、今回のような社会貢献の形を快く受け入れてくれたのだろう。与えられるよりも与えるほうが幸いなのである(當山)。
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