安里 渉 あさとわたる(てるクリニック)
安里 渉 あさとわたる(てるクリニック)
2015-05-15
てるクリニック野球部創部ともに入部
2004年、てるクリニック野球部が創部の際に、高校の先輩から一緒に入部しないかと誘われたのがきっかけだった。
高校卒業後すぐに就職、軟式野球チームに参加する程度だったが、硬式を使って野球をしたいという思いがあり、即決で入部を決めた。ところが、いざ入部してみると周りは沖縄水産、沖縄尚学、興南など、野球で有名な高校の出身者ばかり。
進学校の向陽高出身で高校時代は公式戦に一度も勝ったことがなくコールド負けばかりだった安里選手にとっては名前負けするような、レベルの高い人ばかりで圧倒されがちだったという。
しかし、球だけは速いということで周りの学校には覚えてもらっていたという安里選手に競争心が芽生える。
レギュラーをとって試合で投げたい、その一心で必死に練習でアピールした。
ランニングでも一番に走り、ブルペンでは気持ちを込めて思い切り投げた。
それでも最初の年は公式戦では、なかなか登板の機会をもらえなかった。
もともと肩が強くてスピードは自信があっというが、コントロールがひどすぎてフォアボールを出して自滅するパターン。そのコントロールも少しずつ良くなってきて、2年目からは先発で投げさせてもらえるようになった。
そして、新たな目標と出会う。
独立リーグの徳島インディゴソックスに入団
2005年、独立リーグの四国アイランドリーグが創設された。独立リーグはプロに選手を送り出すことを目指すリーグ。
これを知った安里選手に、幼い頃からの夢が再び湧き上がってきた。
「そこに行けば夢が近付くのではないかという思いになって、四国に行くためこの1年を頑張ろう」と入部2年目のシーズン、大きな目標を定めた。
チーム内でも、もちろん競争に勝たないと試合に出られない。
練習開始より30分前に球場に入っての個人練習や、ウェート、走る込みなど、仕事を終えてからの練習も自らに課した。
球速は130km台後半になった。また、本格的に野球に取り組む機会に恵まれなかった安里選手は、クィックや牽制に課題あり、その修正にも取り組んだ。
そして、創設2年目の四国アイランドリーグのトライアウトに受験。
「1次試験がブルペンだったのですが、今までに投げたことのないようなベストボールが。
たまたま、リーグ創設者の元西武の石毛氏がキャッチャーの後ろで見ているときに、そのボールが行って、これ決まったなと思いました」。
投手だけでも約50人という受験数、4球団ともに投手野手合わせて5,6人という採用枠の中、合格を果した。
最初は敗戦処理からスタートした安里選手。オープン戦で結果を出し中継ぎに昇格。
球団には10名ほど投手がいるが、試合は週末の3試合だけなので、投げられる投手も一握り。中継ぎで失敗すると1ケ月間出してもらえないこともあった。
そんなときは次のチャンスが来るまでひたすら辛抱という日々を送った。
独立リーグはプロに選手を輩出することを目指している。プロに行けそうなレベルかどうか見極められて、その可能性がない人は半年でクビを言い渡されこともある厳しい環境。
安里選手は2度の契約更新を乗り越え、3年目には先発ローテションにも入り、投球回数も100イニングを超えるなど結果を残した。
しかし、そのオフ。26歳になっていた安里選手は、即戦力で行けるレベルでないとプロへの入団は厳しい年齢だった。「プロに行くレベルに達していないから悪いけど契約を切らしてもらう」と解雇通告を受けた。
安里選手の夢が閉ざされた瞬間だった。
「少年野球からやっているので、やっぱりプロへの憧れってあるじゃないですか。それが消えなかった。高校で思い切りやっていたら、あきらめの気持ちに変わったかもしれない。
でも、(高校時代が)中途半端で消化不良だったのであきらめきれなかった。もっと出来るんじゃないかと自分でも思うところもあり、その可能性が、てるに入ることによって見えてきた。
周りには勘違いって言われましたが(笑)」。安定した職場も退職し、チャレンジの道を選んだことは後悔していない。
常にピンチの場面を想定して投球練習
第2代表決定戦でピンチの連続にも動じず最小失点に抑えたピッチング。「そういう想定の練習しかしていないので逆に自信はありました」。
ブルペンでの投球練習は、一番苦しい場面を想定して行なっている。
例えばノーアウト満塁で打席には4番が立っているなどを想定しながら、練習で配球とコントロール、投球術を身につける。
当然、練習への取り組みも変わってくる。「常にピンチの場面を想定して投球練習することは、四国に行ったときに言われました。
実際、僕もピンチばかりで(笑)。ピンチに強い人がいい結果を残すことができると思います」と話す安里選手。
投手コーチも兼任している現在、若い投手たちへも一番苦しい場面を想定して練習するように常に伝えている。「練習量が他のチームに比べて少ないので、いかに実戦向けのピッチングを意識して覚えるかです。
今、ブペンが全然変わってきているので、力をつけてくると思います」。
昨年の都市対抗九州2次予選では、九州三菱自動車を継投、継投でつないで勝利した。みんなが結果を出して嬉しかったとコーチの顔になった。
目標は、球速140キロ
今年33歳を迎える安里選手。「嫁さんとの約束があって。130キロを投げられなくなったら引退という。
でも、まだ欲があって、140キロを投げたいという夢があるんですよ。それを目標に、今いろいろトレーニングとかまだ頑張っています」。と向上心は失わない。
てるクリニックjは、昨年の九州クラブ選手権で準優勝し、西日本大会にも出場、ベスト4まで勝ち進んだ。
「自分が投げられている間は、都市対抗の2次予選やクラブ選手権の全国大会に出場して若い選手に大舞台を経験させたい。
そして、院長先生(監督)に恩返しをしたいという気持ちがあります」と話す安里氏。
野球を楽しんで、体のケアも怠らず、さらに自身の左腕に磨きをかけ、チームを勝利に導きたいという思いも強い。
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