セミファイナル:美来工科 vs 那覇、 興南 vs 知念

第66回沖縄県高校野球秋季大会 準決勝

2016-10-15

美来工科 vs 那覇

セミファイナル第1試合

16年振りのベスト4進出を果たした那覇は、左腕瀬長勇太朗と右腕東江椋佑の継投で全4試合無失点。対する第1シード美来工科は、チーム打率.375と4強中トップの強打で勝ち上がってきた。

美来工科は1回、一死一・二塁から併殺。2回も得点には至らなかったものの、二死三塁と攻め立てる。そして3回、松田快晴がライト前ヒットで出塁すると、犠打と神山諒介のセンター前ヒットで一・三塁。ここで3番山川倫輝がセンター前へ運んで先制点を挙げた。

次打者はサードゴロも、ゴロゴーで突っ込んだ三走は本塁でアウト。新垣海斗はレフト前ヒットを放ったが、ここでも本塁へ突っ込んだ二走を、那覇の中継が上回る。1点を失ったものの「守りの那覇」を存分に見せつけた。

ただこのアウトも美来工科にとっては「コーチャー島袋海斗の判断。彼が何度もチームの得点を作ってきた。彼は影の功労者だし僕は信頼している」と眞玉橋元博監督は、むしろ戦いの姿勢を示したナインを讃える。その「攻めの」プレッシャーが、これまで冷静だった相手の判断を狂わせたのかも知れない。

4回、美来工科はヒットと相手のエラーが絡み二・三塁とチャンスを得る。ここで那覇は痛恨のバッテリーエラーが出てしまい三走が生還。だが、キャッチャーが二塁走者の存在を一瞬忘れてしまったのだろう。美来工科ベンチ前に転がるボールを全力で追わず、その一瞬の隙を突いて二走までもが生還したのだ。

さらに美来工科は7回、一死一・二塁から神山のタイムリーで加点すると、8回には押し出し四球と古謝僚人の走者一層のタイムリー三塁打が飛び出す。一気にコールドが成立する7点差をつけてゲームセット。秋季大会では創立以来初となる決勝進出を果たしたのだった。

那覇は、5回までに3度も得点圏にランナーを進めたが、美来工科山内慧に要所を抑えられてしまった。9回、瀬長の二塁打をきっかけに1点を返したが、この意地がシード校として迎える春に生きてくるだろう。(當山)

セミファイナル第1試合

 1 2 3 4 5 6 7 8
那覇0 0 0 0 0 0 0 1 1
美来工科0 0 1 2 0 0 1 4z 8
(那) 瀬長、東江-崎原
(美) 山内-神山
三塁打 : 古謝(美)
ニ塁打 : 瀬長(那)

投打に隙のない美来工科

思えば、新人中央大会の準々決勝にて名護の前に9回二死(三塁)と追い詰められながらも同点に追い付き逆転勝ち。それが選手たちに自信を植え付けた。そしてこの秋季大会。3回戦で再び名護と対戦し、同じように終盤ピンチを迎えながら何とか抑え延長戦を制した。

「殆ど経験が無い山内。それを積むことが出来ているのが一番」と眞玉橋監督。山内の特徴は二つ。一つは随時130キロ後半をマークするストレート。もう一つが抜群の制球力で、1試合の与四死球率は僅か0.56だ。

9イニング換算で、7.36点を奪う強力打線は9人中7人が打率3割以上をマーク。平川輝と松田快晴は恐怖の下位打線となり、上位へと繋がり4試合中3試合で二桁安打をマークした。投打に隙のない野球で九州での大暴れを、そして来春の選抜切符を期待したい。(當山)

7回裏、興南は代走の里魁斗が決勝点となる本塁を陥れた 惜しくも敗れたが知念・大城匠巳は3安打に抑える好投をみせた 知念打線を完封した興南・上原麗男

興南 vs 知念

セミファイナル第2試合

ここまでのチーム打率は興南が.297で対する知念は.333。一方で、マウンドを預かる上原麗男と大城拓巳の防御率は、それぞれ0.42と0.67。1点以上を奪うのが難しい好投手同士の対決はやはり、ボードにゼロが並ぶ展開となっていった。

序盤を優位に戦ったのは、打に優位な知念だった。1回、3回と連続して一死一・二塁のチャンスを掴んだがどちらも併殺に倒れてしまう。4回には一・三塁も、興南野手陣の巧さの前に三走が挟殺。5回も一・二塁としたがセカンドゴロと、あと1本が出なかった。

興南は5回裏、福元信馬にようやくチーム初ヒットが生まれる。「カーブも含めていい投手。苦しむだろうと思ったがこれほどとは」と、我喜屋優監督も唸らせた大城の快投が光っていた。

しかし6回、7回と上原が知念打線をノーヒットに抑えるピッチングで流れを引き寄せると7回裏、遂に「我喜屋マジック」が姿を見せた。

「ツーアウトで4番が出た。ここで仕掛けないとどこでやるの?あとはカウントが3ボール1ストライクとなったこと。ここで走らせないでどこで走らせるのか。ストライクなら打てばいい。だけど、ボール気味のストライクだったのが結果的にウチにとっては良かったね」。

二死一塁の6球目だった。くさいコースを福元は見逃す。しかしコールはストライク。そこで走者が走った。体制が上手く整わないキャッチャーの送球がセンターへと逸れる。その間に代走の里魁斗が三塁へ向かったがセンターからの送球までもが暴投。一気に本塁を陥れた里の好走塁と、その場面を作り出すタクトを振るった我喜屋監督の、無類の勝負勘が生んだ値千金の1点だった。

しかし知念も諦めない。8回、代打伊集壱太がヒットで出塁すると二死三塁で頼りになる山城へ回した。

「彼は一番良い打者。逆転の走者となるけどあの場面は敬遠が一番」と興南ベンチとバッテリーは次打者との勝負を選んだ。「途中からストレートをカットされてて合ってきているなと。そこでマウンドへ足を運んで、麗男に最後はスライダーで行こうと話して決めました」(興南金城捕手)。試合を左右する痺れる場面は三振。ここぞという場面で見せた興南の勝負強さが、知念を凌駕したゲームであった。(當山)

セミファイナル第2試合

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
知念0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
興南0 0 0 0 0 0 1 0 x 1
(知) 大城拓巳-金城
(興) 上原-渡辺

大会で急成長した興南

「歴代のチームとは比べられないよ。見て分かるでしょ」。美来工科がほぼ9人のレギュラーで固定出来ているが、興南はそうではなかった。不動の1番としてチームを牽引する仲村匠平は2、3回戦は先発ではなかったし、キャッチャーは渡辺健貴と諸見伸彦が争う。

内野手も固定出来ているのは一塁の中山莉貴のみだ。「福元が外野を守れるようになったことは大きい」と我喜屋監督。元々同じタイプの中山と福元は4番ファーストの座をどちらかが務めていた。その大砲二人が同時に試合に出られるようになったことで厚みは増した。

それでも全体的に見の痩せ細り感は否めないものの、準決勝を終えてチーム打率.268ではあるが9イニング換算得点は4.5をマーク。勝負どころの集中力は、興南戦士に相応しいものだ。

その興南を2年連続でファイナルステージへと押し上げたのは上原。新チームではエースとしてマウンドを守り、防御率は0.30をマーク。奪三振率も7.43と高い。3.57と比較的高めな与四死球率を下げることで、九州大会も結果を出すことが出来るだろう。

まずは昨年の秋、3-10と屈辱の負けを喫した九州の借りを返す。そして選抜の切符を手に入れる。またまだ伸び代が大きいながらも決勝進出を果たしてしまうチーム。それが今の興南だ。(當山)

8回1失点と好投した美山内慧 3回裏、先制打を放つ美来工科・山川倫輝
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