美来工科が創立以来初となる新人中央大会の頂点へ

第43回沖縄県高校野球新人中央大会決勝戦

2016-09-15

第43回沖縄県高校野球新人中央大会は8月15日、名護球場にて3位決定戦と決勝戦が行われ美来工科高校が大会初優勝を成し遂げた。

決勝

美来工科 vs 沖縄尚学

3回表、美来工科は一死から古謝僚人がセンター前ヒットで出塁すると、続く神山諒介がセンター横を襲う二塁打で先制。しかし沖縄尚学はその裏、一死二塁から知念大成のレフト線を襲うタイムリー二塁打ですかさず同点に。この攻防は最後まで続くこととなる。

6回表、美来工科は二死から山内慧がレフト前へのヒット、続く新垣海斗が二塁打で続き二・三塁とする。ここで比屋根京介がセンター前へ弾き返して二者が生還した。

その裏、沖縄尚学は一死一・二塁から石川亮介がヒットで繋ぎ満塁とする。ワイルドピッチで1点を加えたのち、代打で登場した磨龍輝にライト前タイムリーが生まれ同点。

新人戦とはいえ、秋の県大会を占う頂上決戦にふさわしい一進一退の攻防だった。

美来工科が前身の中部工業時代を含む初の大会優勝!

7回、一死二塁から古謝が思い切り弾き返した打球はライトを襲うタイムリー二塁打となる。その後、山川倫輝がライト前へと運び古謝が生還。大きな2点目を刻み入れた。

沖縄尚学もその裏、與座巧人のタイムリーで1点差と詰め寄る。9回裏に、代打の普久原琳に二塁打が飛び出したがここまで。シーソーゲームを制した美来工科が、大会初優勝を成し遂げたのだった。

決勝

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
美来工科0 0 1 0 0 2 2 0 0 5
沖縄尚学0 0 1 0 0 2 1 0 0 4
(美) 比嘉太、比嘉竜、山内―神山
(沖) 與座、河野、岡留、與座―池間
三塁打 : 那覇(美)
ニ塁打 : 神山、新垣、古謝(美)・知念、與座、普久原(沖)

3位決定戦

宜野座 vs 八重山

昨年秋に続くシードを確定した両チームの対戦。先制したのは宜野座だ。4回、センター前ヒットで出塁した新里虹を犠打で送る。その後二死一・三塁としてダブルスチールを敢行し三走が生還した。

追う八重山はその裏、一死から川満拓也と東盛隼己の連続長短打であっという間に同点とすると二死後、大濱のタイムリーで逆転に成功した。さらに八重山は5回、大城のタイムリーとすると相手のエラーで2点を加え優位に立つ。投げては花城、川原のリレーで6回以降、宜野座打線をノーヒットと封じ第3シードを決定したのだった。(當山)

3位決定戦

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
宜野座0 0 0 1 0 0 0 0 0 1
八重山0 0 0 2 2 0 0 0 x 4
(宜) 垣花、宮里–川満
(八) 花城、川原–石垣
ニ塁打 : 東盛、大濱、比嘉寿(八)

準決勝

美来工科10-3八重山
沖縄尚学10-3宜野座8回コールド

準々決勝

美来工科4x-3名護
沖縄尚学7-0石川7回コールド
八重山5-2嘉手納
宜野座11-1宮古総実

1回戦

美来工科10-1宜野湾7回コールド
沖縄尚学11-4美里工8回コールド
八重山9-6知念
宜野座6-4首里
名護8-4興南
宮古総実13-11那覇
石川4-3豊見城延長13回大会初となるタイブレーク

秋季県大会でも中心となる美来工科と沖縄尚学。

他を寄せ付けない強さを感じさせた2強を見る

美来工科(打者成績)

選手名打数安打打点得点盗塁打率
古謝僚人1695810.563
神山諒介1573300.467
山川倫輝1234100.250
山内慧1676300.438
新垣海斗1530200.200
比屋根京介1685200.500
平川輝1654100.313
那覇優雅1640300.250
仲宗根誠910200.111
名渡山海斗321100.667

沖縄尚学(打者成績)

選手名打数安打打点得点盗塁打率
安里大心1573400.467
仲与志亮輔1360400.462
知念大成1243300.333
砂川リチャード1588600.533
與座巧人1464100.429
木村哲汰1032400.300
石川亮介1032110.300
伊藝彰吾501000.000
池間大智1574400.467
河野哲平611100.167

美来工科(投手成績)

選手名投球回打者被安打奪三振与四死球自責点防御率
山内慧271042112362.00
比嘉太陽41831512.25
比嘉竜聖31232113.00

沖縄尚学(投手成績)

選手名投球回打者被安打奪三振与四死球自責点防御率
河野哲平16回1/3691616494.97
與座巧人13521215332.08

 高校球児たちの目標といえば春の甲子園こと全国選抜高校野球大会(以下選抜)と、夏の甲子園こと全国高校野球選手権大会への出場だ。その選抜への出場が懸かる秋季県大会を占うのがこの新人中央大会である。

昨年、優勝した八重山と準優勝の興南がそのまま秋の決勝へと進出したのは記憶に新しいだろうし、2013年の優勝美里工もそのまま秋季優勝、2012年準優勝の沖縄尚学が秋準優勝、優勝した宮古も同4強と、新人中央大会の勢いがそのまま秋の県大会の結果へと繋がりやすい。

今新人中央大会では準決勝という舞台にも関わらず、美来工科と沖縄尚学が共に10-3という大差をつけたことで、秋もこの2強を中心に動いていくことが予想される。そこで2強の強さや戦力を少し紐解いてみたいと思う。

中央大会で強くなっていった美来工科

「中部北地区では全く強さというものが見られなかった」とは美来工科の監督を務める眞玉橋元博先生。その言葉の節が名護高校戦に見られた。

2点を先制し7回を終えてリードしていたが8回、山内慧が突如乱れ犠飛、そして二者連続タイムリーを浴びてしまった。最終回裏、三塁へ進めたものの既に二死。だがこの土壇場で比屋根京介と平川輝に連続タイムリーが出てサヨナラ勝ち。

ここで粘り強さを手に入れたナインは沖縄尚学が相手となった決勝でも詰め寄られたものの、決して逆転を許すことは無かった。

初優勝の立役者は小さな斬り込み隊長古謝僚人。4試合の打率は.563で全体のトップでもある。中軸を務める力も十分ある神山諒介が山内慧らクリーンアップへ繋ぐ。

3番を務めた山川倫輝がこの秋、本来の打撃を見せるならばさらに破壊力が増す。この大会で勝負強さを発揮するなど急成長を見せた一年生比屋根京介にも注目が集まる。選手個々が、眞玉橋先生が掲げるフロント・フット打法に精通しているからこそのチーム打率.348、全4試合29得点の優勝でもあっただろう。

投手は右オーバースローの大黒柱山内慧を中心に動く。打たせてとるアンダーハンド比嘉太陽も計算が立つ上に、上下と目先を変えられてしまう相手打者から見れば相当厄介だ。

最強メンバーが揃う沖縄尚学

一年生中央大会で優勝するなど、この世代最強メンバーが揃うのが沖縄尚学。力強いストレートを放る右の河野哲平と、キレで勝負する左の與座巧人の沖縄尚学伝統となりつつある左右両輪が健在の投手陣だが、不安が無いわけではない。

河野は立ち上がりに、與座は終盤に掛けての詰めの甘さというものが美来工科戦では露出してしまった。しかしそこは高いポテンシャルを持つ2人。課題を克服してくれるだろう。

4割以上が5人もおり、チーム打率が.389と近年に無いほどの破壊力を持つのがこのメンバーでもある。監督を務める比嘉公也先生が絶対的信頼を置くヒットメーカーの安里大心と、新人中央大会で「1人で3本塁打は記憶に無い」と、長年沖縄県の高校野球に携わる高江洲登先生も驚嘆した不動の4番砂川リチャードの2人が中心。

そこに走攻守に長けるメンバーが名を連ねるが、クリーンアップの一角を務める知念大成と、「一年生では嶺井博希以来」と比嘉先生が語る正捕手を務める池間大智の2人にも注目が集まる。

精神的なものや心構えといった、先輩たちが培ってきた名門ならではの伝統。まだそれを十分に身につけていない彼らが真にその伝統を受け継いだとき、3度目の選抜制覇も夢では無くなる!(當山)

今年から準優勝校に荒井杯が授与

 沖縄戦末期に、島田知事の戦時行政を最後まで補佐した沖縄県警察部長が荒井退造氏である。島田氏と協力し沖縄県北部、九州等への疎開に尽力し10万余の沖縄県民を救ったとされる。栃木県出身。「職に殉じた栃木の偉人荒井退造」を顕彰するため創設されたものが「荒井杯」である。

優勝校に贈られる島田杯

戦中戦後の第27代県知事「島田叡」氏の母校、県立兵庫高校武陽会や遺族会など関係者から、沖縄県高校野球連盟に贈呈されたものが「島田杯」である。島田氏は、兵庫県の名門兵庫高校野球部から東京大学まで俊足、強肩、強打者として鳴らした名選手であった。従って島田杯にも「沖縄県高野連の発展と高校球児の活躍を祈願する」と記されている。島田知事は、荒井警察部長と共に糸満の激戦地摩文仁で最期の死を遂げた。(沖縄県高等学校野球連盟)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

大会結果:美来工科が創立以来初となる新人中央大会の頂点へ トップに戻る