嘉手納高校が創立以来初の夏の頂点

第98回全国高校野球選手権沖縄大会

2016-08-15

第98回全国高校野球選手権沖縄大会は17日、セルラースタジアム那覇にて決勝戦が行われ嘉手納高校が2本のホームランなどで会心の勝利を収め、同大会では創立以来初の優勝を成し遂げた。
嘉手納、初となる夏の甲子園出場!

決勝

嘉手納 11ー3 美里工

マシンガン打線vsビッグバン打線

中部北地区の嘉手納高校と同南地区の美里工業高校。中部地区同士の決勝戦は、昭和50年の石川高校対コザ高校以来実に41年振りのこととなったが、その幕開けから試合は激しく動き回る。

美里工は初回、一死から前徳柊亨がライトへ三塁打を放つと4番大田浩二が先制のタイムリー。その後新垣嗣人がスクイズを決めて2点を刻むなど、美里工マシンガン打線がいきなり炸裂した。

するとその裏、嘉手納は先頭の幸地諒承がレフト前ヒットで出塁すると次打者の犠打で二塁へ。ここで大石哲汰がレフト線へ運び1点を返し打線に火がついた。

以下、嘉手納怒涛の5連打を振り返ると

(一死二塁から)

3番大石哲汰がレフトへタイムリー

4番知花拓哉がレフトオーバーの二塁打

5番比嘉花道がライト前へヒット(その後相手のエラーが絡む)

6番古謝巧真がセンター前タイムリー

7番仲地玖礼が左中間を襲う2点タイムリー三塁打

圧巻の5打者連続長短打。なおも貪欲にスクイズで加点し6対2と試合をひっくり返した。

打線に力があることは誰もが認める嘉手納だが、準決勝までの5試合の得点は25得点。

それが僅か1イニングでこの大量得点。「前日からボールが良く見えるようになった」と、ナインが大蔵宗元監督に伝えていた通り、全てを破壊する南国のビッグバン打線が目覚めた瞬間だった。

2回、美里工は走者一塁から浦崎竜平がセンター前へ運ぶ。これをセンターが後逸する間に1点を返した。しかし嘉手納は4回に、大石哲汰のソロアーチが生まれると、7回には走者を二人を置いて大城堅斗に3ランホームランが飛び出す16安打11得点で美里工を圧倒。

投げては仲地玖礼が「ワインドアップが合わないようならセットで言ったらどうだ」と大蔵宗元監督が助言したという3回以降、マシンガン打線を僅か3安打に封じ込める会心の勝利。

一年生中央大会で29年振りに嘉手納に優勝をもたらした、周りから愛されるお調子者たちが、締めである最後の夏の栄冠を見事掴んだのだった。(當山)

決勝

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
美里工2 1 0 0 0 0 0 0 0 3
嘉手納6 0 0 1 1 0 3 0 x 11
(美) 漢那、辺土名、宮城貴−松川
(嘉) 仲地−知花
本塁打 : 大石、大城(嘉)
三塁打 : 仲地、比嘉花(嘉)前徳(美)
ニ塁打 : 知花、幸地(嘉)大田(美)

準決勝

嘉手納3-0那覇西

仲地貫禄の8回ゼロ封!嘉手納が初の決勝へ進出

嘉手納・仲地玖礼、那覇西・赤嶺由生郎。今大会のナンバーワン投手を決める戦いはやはり、緊迫した投手戦となった。

嘉手納は2回、ヒットと四球などで二死一・三塁とすると大城堅斗がレフト前へ運ぶタイムリーで先制する。

さらに嘉手納は3回、二死から大石哲汰が四球を選ぶと4番知花拓哉がレフトへ高々と打ち上げる2ランホームランでリードを広げた。

対する那覇西も3回には二死二塁、4回にも一死から連続ヒットが飛び出したが、後続が仲地に斬られ得点することがかなわない。

終盤7回にも下位打線で二死二塁、9回には4番宮城律希にこの日2本目の意地のヒットが生まれたが、三振とショートライナーでゲームセット。

しかし、那覇西初のベスト4を成し遂げたナインの実績はこれからも輝き続けることだろう。(當山)

準決勝

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
那覇西0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
嘉手納0 1 2 0 0 0 0 0 x 3
(那) 赤嶺−高江洲
(嘉) 仲地、仲井間−知花
本塁打 : 知花(嘉)
ニ塁打 : 知花(嘉)

準決勝

美里工7ー4小禄戦

長打7本で小禄をねじ伏せた美里工

美里工は2回、この回先頭の新垣嗣人がレフトへ二塁打を放つと犠打で三塁へ。ここで松川剛大がレフトへ運び先制した。

追い掛ける小禄は3回、4番の上原優にレフトスタンドへの3ランホームランが生まれるなど一挙4点を奪い逆転に成功する。

だが美里工は4回、二死三塁から「前の試合まで開いてしまっていたので8番に置いたが、修正してくれたね」と、神谷嘉宗監督が褒めた大田浩二がセンター前へ運び1点を加えると、続く辺土名海がセンターの頭上を越える二塁打を放つ。

一塁から大田が一気に生還して1点差とした。5回には一死一・三塁から新垣のバントヒットで同点。そして6回、大田にこの日2本目の長打が生まれると浦崎がスクイズを決めて逆転した。

7回と9回にも得点を加えた美里工は14安打の猛攻で7得点。小禄との打撃戦を制し3年振り3度目の決勝進出を果たした。

敗れた小禄だったが、9年振りのベスト4進出、そして46年振りの決勝の夢を追ったナインの功績は見事だった。(當山)

準決勝

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
美里工0 1 0 2 1 1 1 0 1 7
小禄0 0 4 0 0 0 0 0 0 4
(美) 辺土名−松川
(小) 上原悠、前武當−上地
本塁打 : 上原悠、前武當−上地
三塁打 : 大田、屋我、新垣(美)
ニ塁打 : 屋我、新垣、辺土名、大田(美)

準々決勝

準々決勝

 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
嘉手納0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 2
八重山商工0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1
(嘉) 仲地−知花
(八) 黒島、平良海−前粟蔵
ニ塁打 : 知花(嘉)平良海(八)

準々決勝

 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
那覇西0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1
前原0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
(那) 赤嶺−高江洲
(前) 山根−中村利
ニ塁打 : 仲程、我那覇(那)仲村(前)

準々決勝

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
美里工2 0 0 0 1 0 1 0 3 7
宜野座1 0 0 0 2 1 0 2 0 6
(美) 漢那、辺土名−松川
(宜) 玉城−奥間
本塁打 : 岸本(宜)
三塁打 : 大嶺(宜)
ニ塁打 : 辺土名(美)比嘉、仲田、佐久田(宜)

準々決勝

 1 2 3 4 5 6 7
那覇商0 0 3 0 1 0 0 4
小禄2 2 0 3 0 2 2x 11
(那) 上間、照屋−松永
(小) 前武當、阿波根−上地
三塁打 : 上原琉(小)松永(那)
ニ塁打 : 屋良(那)

とうやまアイ

色々な意見が飛び交った浦添商と小禄との試合。8回表に浦添商が2点を奪ったが、その裏小禄の攻撃中に雨が激しくなり試合続行不可能に。その結果、均等回に戻すことで小禄が勝利を収めた。恐縮ですが僕なりの意見を述べさせていだだけるならば。

高校野球は7回が成立した時点でゲームを終えることが出来る。これはルールだ。今の時代なら雨雲レーダーなどで監視出来るので、審判員や本部がここまでという判断を下すことも十分可能であったと思う。

それでも。8回表に入ったのは「出来る限りやらせてあげたい」という、沖縄県高野連の思い遣り以外なにものでもない。

「浦添商まだ諦めるな!」というエールのようなものさえあったと思う。

しかし。雨脚が強まって、どうしてもこれ以上続行することが出来ない状態になったのだ。そうなると裏の攻撃を完了していない以上、平等を期すため均等回に戻ること。

それが試合完了を表す7回だったこと。ルールの改正を求める声も聞く。しかし、この試合の勝者は明日も準々決勝を戦わねばならない状況だった。そんな状態で果たして水が引くのを待って、9時10時まで試合するというのは、もはや高校野球ではないと思うのは私だけだろうか。

浦添商キャプテン久高将真の、試合翌日のメールを紹介しよう。「まだ正直モヤモヤしています。でも(この夏)勝って(リードしたまま試合を終えたのは)甲子園優勝校と浦添商だけです。死んでも忘れません!たくさんの人と出会えて、ホントに人として大きく成長出来ました。浦添商はさいこーです」

雨のグラウンドの中で立ち尽くし、頭の整理がつかない浦添商ナインに宮良高雅監督が掛けた言葉。「納得いかないよな!でもルールがある。8回の裏まで攻撃が出来ないと、7回の得点に戻ってしまう。お前たちは勝ってるよ。勝っているよホントは。でも誰にも当たるな!悪いのは台風やさ!」。

その翌日、小禄の応援に駆けつけた浦添商エース大嵩博斗は「引きずっていても何にもならない。前を向く。小禄には自分たちの分まで頑張ってほしい」。彼の話を聞いて、こう感じた。そうだよ、高校野球が目指すものは勝ち負けではないと。負けて終わり、負けたら今までやってきたことが水の泡になるのなら、何の意味も持たない。興南我喜屋優監督が言う、高校野球が終わってからの長い人生のスコアボードにどう刻んでいくのかが大切なのだから。(當山)

3回戦

 1 2 3 4 5 6 7
浦添商2 0 0 1 1 0 0 4
小禄0 0 0 7 1 0 0 8
降雨7回コールドゲーム
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