合言葉は「監督に花道を」!糸満が2年振り5度目の優勝
第63回沖縄県高校野球春季大会
2016-04-15
「優勝するぞというと固くなっちゃう。それを言わずに、でもここまでやってくれて。生徒たちにはありがとうしかないです。」と、試合後の糸満高校上原忠監督は語った。
この大会を最後に糸満高校を去る事が決まっている指揮官。昨年の新人中央大会では浦添商に、秋季大会でも前原にいずれも1点差で敗退。一年生大会では中央進出も無かった糸満高校。しかし、年明けの高校野球部対抗競技会で3連覇を果たすと、春のダークホース的存在に。前チームから1番を務めてきた大城翔太郎と、同じくマウンドを預かっていた平安常輝の出来が左右する中、大城翔が打率.417、得点9をマークすれば平安も防御率0.38と期待以上の成績で牽引。見事チームを優勝へと導いた。
決勝戦
初戦で優勝候補のシード興南高校を下した糸満高校と、昨年の大会4位から更なる成長を見せる豊見城高校が決勝へ進出。豊見城高校は9年前にも決勝へコマを進めたが、その時の相手が中部商業高校で指揮を執っていた上原忠監督だった。 奇しくもこの日、同じTOMISHIROのユニフォームの前に立ちはだかったのも同監督で、これまた今回と同じ新年度(4月)から他校への赴任(9年前は中部商から糸満へ。
今回も糸満から沖縄水産へ)が決定した同監督のチーム最後の大会。さらに場所も同じ北谷公園野球場とあって、なにか因縁めいたものを感じさせる対決でもあった。
豊見城高校が6戦連続登板となるエース翁長宏和を先発に送れば、糸満高校も前日の沖縄尚学高校戦で、延長14回を投げきった大黒柱の平安を立ててきた。両投手の疲労度具合ではどちらか一方的な試合展開か、もしくは空中戦となる可能性も秘めていたがどうして。ふたを開けてみると、両投手の投げあいが緊張感をもたらす素晴らしい試合となっていった。
先制したのは糸満高校。1回裏、斬り込み隊長の大城翔がライト前ヒットで出塁すると、犠打とヒットで一・三塁。ここで平安がきっちりとスクイズを成功させて1点を刻んだ。前日189球を投げた平安だったが、「試合前にブルペンで受けててやはりいつもと違うと。疲れがあるんだなと。」感じていた女房役の桃原虎雅は、沖縄尚学高校戦で見せたストレートが、向こうの脳裏にもあるに違いないと読む。
「力任せに行かず、スライダー中心で行こう!」と、平安と話し合わせたことが的中。なんと5回を終えて被安打1本のみと豊見城打線を牛耳っていった。一方、翁長も丁寧にコースを突く自分の投球に専念し、2回以降失点を許さない。すると6回表、糸満野手陣の送球エラーが出て副主将の嶺井友貴が生還。1980年以来となる36年振りの栄冠へ執念を感じさせる同点劇だった。
しかし糸満高校は8回裏、先頭の大城翔がこの日3本目となるヒットを放つと一死一・二塁として、打席に入った平安の打球はセンターへ。大城翔が生還すると、平安は一塁上で拳を突き上げた。9回表、平安は2つの四死球を与えてしまったものの気力を振り絞り、最後の打者を三振に斬ってガッツポーズ。この大会でチームを去る、上原監督へ花道を飾ってあげようと団結したナインが、2年振り5度目の春季大会優勝を決めたのだった。
決勝
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
豊見城 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 |
糸満 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | x | 1 |
糸満は1955,2010,2011,2014年に続く5度目の優勝。 これは沖縄水産(9度)、沖縄尚学(7度)、興南(6度)に次ぎ、中部商と並ぶ優勝回数である。
三位決定戦
「7回で決められない弱さがこのチームにはある。あそこで決められなかった弱さが、あわやという場面を作ってしまう。」と、比嘉公也監督は苦渋の言で振り返った。試合は2回、沖縄尚学高校が仲西莉音、高良諒、宮城良隆の3連打で1点を先制すると、諸見里俊の当たりは一塁ゴロ。だがこれをトンネルしてしまう間に2点目を加えた。さらにツーアウト後、知念大河がレフトを襲うタイムリー二塁打を放ち一挙4点を奪った。「2点を取られたら交代を考えていた」(比嘉監督)、先発の松川巧実は6回を除く毎回安打を浴びるも130Km後半のストレートを武器に何とか凌ぎ、ゼロのままマウンドを守り続けた。
すると沖縄尚学高校は7回裏、打率.435と打線を引っ張ってきたトップの安里大心に、この日3本目のヒットが生まれると犠打で進めて大兼久亮平がライト前へ運びまず1点。
二死後、5番の仲西にライトオーバーのタイムリー三塁打が飛び出して2点目を迎え入れた。コールド勝利まであと1点と迫ったがショートゴロに斬られると8回表、美来工科は一死から山里太壱がヒットで出塁するとワイルドピッチで二塁へ。
ここで目取真慶樹がタイムリーを放ち1点を返すと、続く神山諒介もレフトへ二塁打を放ち二・三塁と攻め立てた。「ああなるとエースしかいない」と、比嘉監督は諸見里をマウンドへ送り出すが、前日の準決勝で183球を投げていた左腕にもさすがに疲れが見えた。ツーアウトまで粘るも古謝僚人にライトへ運ばれ二者が生還。さらに満塁とされ、ここで1本が出るとたちまち同点となる場面となったが、次打者をライトフライで切り抜けると、9回も先頭打者にヒットを浴びたものの二塁への進塁を許さずゲームセット。沖縄尚学高校が2年連続となる三位決定戦を制した。
三位決定戦
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
美来工科 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 3 |
沖縄尚学 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | x | 6 |
準決勝
準決勝
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
沖縄尚学 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
糸満 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1x | 1 |
準決勝
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
美来工科 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
豊見城 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | x | 2 |
ベスト4校エースの大会成績
校名 | 氏名 | 防御率 | 被打率 | K/BB | 評価 |
糸満 | 平安 常輝 | 0.38 | .145 | 1.85 | 2日で313球を投げ自責0。140Km越えとキレある変化球のタフネス右腕。 |
豊見城 | 翁長 宏和 | 1.26 | .197 | 1.13 | 走者出しても要所を抑える精神力。シュート、スライダーで打者揺さぶる。 |
沖縄尚学 | 諸見里 俊 | 0.26 | .193 | 4.14 | 32回2/3連続無失点。冬の走りこみで四球を与えず三振を奪う力を得た。 |
美来工科 | 仲宗根 登夢 | 1.91 | .229 | 4.13 | 緩急を自在に操る巧右腕。走者を出すも動じない強心臓で初の4強入り。 |