沖縄大・準優勝。神宮へあと一歩届かず。西日本工業大に逆点負け、初の全日本選手権出場を逃す

第93回 九州地区大学野球選手権大会 決勝トーナメント

2015-06-01

全日本大学野球選手権大会への出場をかけた第93回九州地区大学野球選手権大会決勝トーナメントが5月21日から25日の間、沖縄県で開催された。県代表は、沖縄大と名桜大が出場した。沖縄大は決勝まで進出し、西日本工業大と全国大会への出場切符をかけ争ったが、逆点負けを喫し、神宮まであと一歩のところで届かなかった。名桜大は初戦の2回戦で優勝した西日本工業大に敗退した。

決勝

決勝

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
沖縄大 0 0 0 0 0 1 0 1 0 2
西日本工業大(福岡県)0 0 0 0 0 0 0 5 x 5
(沖) 山城翼―新垣太
(西) 中嶋―大野
三塁打 : 田中(西)
ニ塁打 : 松山和、城須、宮川(西)

好投の沖大・山城翼に、突如訪れた悪夢のような8回裏

この日の決勝も、7回まで無失点の好投を続けていた沖大のエース山城翼(糸満・4年)が、8回裏に5本のヒットを浴び5点を失い、くやしい逆点負けとなった。

沖縄大は、山城翼が今大会、1回戦、2回戦、準決勝と一人で投げぬき3連投で決勝まで勝ち上がってきた。

4連投目となる決勝が、雨のために1日延びたおかげで状態は良かったと試合後に本人は話したが、心身の疲労は当然あるものと思われた。 それでも、3試合で失点がわずか2点という粘りのピッチングを決勝でも披露、7回まで西日本工大を無失点に抑えていた。 さらにこの試合、山城翼は自らの守備で、ピンチも脱するフィールディングの良さもみせていた。

一死1、3塁と先制されるピンチを迎えた2回裏には、スクイズバントに対し巧みなグラブトスで3塁走者の本塁突入を阻止、続いて2塁走者も牽制球でアウトにした。

5回にも無死1塁の場面で素早いバント処理をみせ、1塁走者を2塁で封じ、傷口が広がるのを防いだ。

守るバックのリズムも良く、ノーエラーで、4回と6回にはダブルプレーで相手の攻撃を封じていた。

1回表の一死1、3塁のチャンス、2回表の二死1、3塁、3回表の一死満塁と、ことごとくチャンスをつぶしていたが、相手に流れを渡さない山城翼の粘りのピッチングと堅い守りで相手に得点を許さなかった。

0対0のまま迎えた6回表、沖縄大は二死3塁から新垣太一(糸満・4年)にタイムリーヒットが生まれ、待望の先取点をあげる。

そして、8回表には一死3塁とチャンスを得ると7番亀川良太(浦添・2年)にスクイズのサイン。

西日本工大・中島の投じたボールは、すっぽ抜けて頭より高いボールとなったが、これを亀川が飛び上がりながらも、フェアグランドにころがす技ありのバントで2点目をあげた。

それまでの試合の流れから、勝利の風が沖縄大に向かって吹き始めたと誰もが感じた追加点だった。

しかし、沖縄大に向かって吹き始めた勝利の風に乗っかったのが西日本工大だった。

8回裏の西日本工大は先頭の8番橋口に代えて、代打小峰を送る。

その小峰が起用に応えライト前ヒットを放つ。

この代打の一打で流れが変わる。

西日本工大は、まずは1点を取りに行く作戦で手堅く送り1死2塁とした。

ここから山城翼が西日本工大打線に連打を浴びてしまう。

9番城須がレフトオーバーの二塁打、二塁走者が生還し2対1に。

続く1番宮川の当たりはライトの前へ、ライトの俊足高嶺がスライディングキャッチを試みるが、わずかに届かず二塁打となり、2塁走者が還り同点とされてしまう。

さらに2番松山和がレフト前ヒットでつなぐと、3番田中は左中間を深々と破る三塁打、二人の走者が還り4対2と逆点された。

そして4番松山拓がセンターへ犠牲フライを放ち田中も本塁へ。

この回、一挙5点。

山城翼のボールが少し上ずったところを積極的に打ちに行った西日本工大の打撃陣は見逃さなかった。

一回戦から決勝の7回まで、通算34イニングで2点しか得点を与えなかった山城翼にとって、悪夢のようなイニングとなった。

山城翼

「(今大会を通して)自分でチームを背負うくらいの気持ちで投げた。

自分でも投げていて、抑えられる気持ちになっていて、負ける気もしなかったので、一番いい状態で自分を出せたと思う。

味方のエラーを自分がカバーして、自分が苦しいときは守備がカバーしてくれて、いい試合ができたと思う。

この味わった悔しさを糧にして、秋までしっかり練習して、全国大会に挑戦します」

大城貴之・沖縄大監督

「8回は相手が(山城翼の投げる)ボールに慣れてきたのもあったかもしれない。

1イニングで勝ち負けが決まってしまったが、トータルでみたら良いピッチングだったと思う。

先発が大事なので経験値のある山城には大会前から4連投で行くからと伝えていた。

このチームは、始まったときから神宮に行くことを目標にしてきた。

秋にもう一度神宮に行くチャンスがあるので、かけてみたいと思う」

1.(メイン)4試合を一人で投げ抜いた沖大・山城翼 2.優勝旗を受け取る西日本工業大学・中嶋主将 3.3安打を放ち奮闘した沖大・1番高嶺(決勝・西日本工大戦) 4.6回表、先制のタイムリーを放つ沖大・新垣太一(決勝・西日本工大戦)

沖縄大

打 安 点123456789
(右)高嶺5 3 0中安投ゴ左安遊ゴ左安
(二)内間4 1 0一儀三安二ゴ三振左飛
(三)幸地5 1 0左安三失遊ゴ三振三ゴ
(指)金城盛4 0 0三振三振三振三振
(遊)美崎3 1 0遊ゴ四球中安中失
(一)山口2 0 0四球三振捕飛投儀
(左)亀川2 0 1投儀三振二ゴ三儀
(捕)新垣太4 1 1三振右飛左安三振
(中)東長田3 1 0投安二ゴ三失
打 具志堅1 0 0三振
33 8 2振11 球2 儀4 盗0 失0 残10
投手
山城翼83310415

西日本工大

打 安 点123456789
(指)宮川4 1 1三ゴ三振二ゴ右二
(一)松山和3 2 0遊ゴ四球左二左安
(三)田中4 1 2ニゴ左飛三振中三
(右)松山拓3 0 1三ゴ二直捕飛中儀
(中)北村4 2 0左安遊安 遊ゴ 振逃 
(左)河野2 1 0 右安投ゴ… 
走左 中村2 0 0中飛二ゴ
(二)橋口2 0 0 投ゴ遊ゴ… 
打 小峰1 1 0右安
走二 大瀬良0 0 0
(捕)大野2 0 0一ゴ中飛捕儀
(遊)城須3 2 0三振中安左二 
30 10 5振4 球1 儀1 盗1 失4 残4
投手
中嶋93981121

準決勝

準決勝

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
沖縄大 1 2 0 0 0 0 0 0 0 3
宮崎産業経営大 (宮崎県)0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
(沖) 山城翼―新垣太
(宮) 川崎、西別府、下大園、田原―枇椰
三塁打 : 内間(沖)
ニ塁打 : 亀川(沖)

3連投のエース山城翼が1失点完投。

31年ぶりの決勝進出を決めた。

沖縄大が序盤にあげた3点を守りきり、3対1で勝利。

1984年以来、31年ぶりの決勝進出を決めた。

3日連続で先発のマウンドへ上がったのはエースの山城翼。

1回戦では完封劇をみせ、前日の2回戦も1失点完投。

そして、この日の準決勝も最終回のエラーによる1失点に抑え完投、チームを勝利へ導いた。

3連投の山城翼を援護したい打線は、序盤に得点をあげた。

1回表一死から2番内間安音(明徳義塾・2年)が右中間を破る三塁打を放ちチャンスメイクすると、3番幸地勇太(知念・3年)がきっちり外野へ犠牲フライを放ち先取点をあげた。

2回表には、二死からの追加点をあげた。

二死ながら1、2塁とチャンスを築くと、9番亀川良太がレフトの頭上を越える値千金の一打。

2塁走者の高嶺宏隆(糸満・4年)に続き、東長田裕太(八重山・2年)も1塁から一気にホームベースを駆け抜ける、2点タイムリー二塁打となり、3対0とリードを広げた。

さらに点差を広げ山城翼を楽にしてあげたい打線だったが、3回以降は無得点。

それでも、エースの山城翼は130キロ中盤の速球にツーシーム、カットボールを交え、大城監督が3年間で成長したという球質、球種で宮崎産業経営大を翻弄、許したヒットは5本、得点を与えなかった。

5.沖大・幸地が初回、先制の犠飛をレフトに放つ(準決勝・宮崎産経大戦) 6.2回表、2点タイムリー二塁打を放った沖大・亀川(準決勝・宮崎産経大戦)

2回戦

2回戦

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
沖縄大学0 0 0 0 0 0 0 0 2 2
第一工業大学(鹿児島県)0 0 1 0 0 0 0 0 0 1
(沖) 山城翼―新垣太
(第) 平良―桑江

エラーを帳消しにしてくれたエースへの、恩返しとなる逆転タイムリー!

「エラーのランナーだったから、絶対に三振に斬って点を与えない」と、崇城大学戦で男気ピッチングを見せたエースに感謝した後輩の内間安音は、「今日は絶対やってやる!」との強い思いで、守っては再三の好守を、打っては3安打と最高のパフォーマンスを見せた。

沖縄大は初回、死球と犠打で2塁へ進めるも、三振、セカンドフライと第一工業大・平良亮太(浦添工・4年)の、勝負所でのチェンジアップに苦しめられる。

6回には二死3塁、7回にも2本のヒットで一死1・2塁とチャンスを作るものの、「走者が出たらギアを一つ上げるピッチング」を披露する平良の前にどうしても1点を奪えない。

昨日に続く連投となった山城翼は、3回裏、コントロールに乱れが生じ連続四球を与え、3番岩下に上手くレフト前に運ばれ先制点を許すが、以降は得点を与えない。

山城は、「肩や体が張っていた」と、肉体的にはしんどい状態ながらも、逆に下半身主導で上体の力を抜くことによりバランスが取れ、打たせて取るピッチングを続け、最小失点のみと好投。

劇的な9回を生む。

「ウチの選手は8、9回にやってくれるという確信がある」という大城監督の期待に先頭打者の美崎直聖(八重山・3年)がライト前ヒットで応える。

山口栄太郎(浦添商・2年)も続き1・3塁としたが代打は三振に。

「プレッシャーは無かった」と語った強心臓の亀川良太が打席に立つ。

その裏で亀川良太は、「先輩の、貸して下さい」と城間翔也(興南・4年)へ頭を下げて彼のバットを手にしていた。

これで終わりにするわけにはいかないと、先輩の思いをも一緒に込めた気迫がグラウンドを制する。

「予感がした。

案の定、絵に描いたような高いバウンド。

彼の足なら大丈夫」(大城監督)、「ピッチャーの頭を越えたので、セーフになる」(亀川)と、ベンチとナインの思いが一致した奇跡の同点劇を生み出した。

さらに金城森也(嘉手納・3年)が四球を選ぶと、昨日のエラーを帳消しにしてもらった内間のバットが反応する。

「ストレートが走っていたので、それに頼り過ぎた」(平良)という外の真っ直ぐを捉えた打球は、レフト前に弾んだ。

劇的な逆転タイムリーは、3本目(4打数3安打)となる見事なヒットでもあった。

「昨日勝った時点で決めていた」と、大城監督が送り出した山城翼は、後半も毎イニング走者を背負う苦しいピッチング。

だが左打者が多い第一工業大学打者への、インコースを突くカットボールを有効に使い、要所を締めて1失点完投。

チーム初となる明治神宮球場へ、あと二つと迫る責任感あふれる素晴らしいピッチングだった。

7.逆転タイムリーを放つ沖大・内間安音(2回戦・第一工大戦) 8.逆転タイムリーを放つ沖大・内間安音(2回戦・第一工大戦) 9.第一工大・平良亮太(浦添工) 10.第一工大・桑江鳴人(北中城) 11.第一工大・町田宗幸(興南)

2回戦

2回戦

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
名桜大1 0 1 0 0 0 1 0 0 3
西日本工業大2 2 1 0 0 0 0 0 x 5
(名) 園田、嘉手川―喜屋武、安里
(西) 木本、谷川、坂口―大野
ニ塁打 : 久田(名)、松山和(西)

名桜大、序盤の失点を跳ね返せず、くやしい初戦敗退

2回戦から登場した名桜大。

1回戦を勝ち上がった西日本工業大を相手に1回表に先制し、幸先良いスタートを切ったが、3回までに失った5点を追い付けなかった。

4回以降は西日本工業大を無得点に抑えただけに序盤の失点が悔しいものとなった。

名桜大は初回、先頭の1番久田祥矢(沖縄尚学・4年)が、いきなりレフト前にヒットを放ち出塁。

犠打と盗塁で三塁まで進むと3番桑江俊和(球陽・3年)のレフトへの犠牲フライで本塁へ生還、先取点を挙げた。

しかしその裏、名桜大は2対1と逆点される。

先発した園田誉規(乙訓=京都・2年)が先頭の1番松山和にレフトオーバーの二塁打を打たれると、さらに2番打者に四球を与えてしまう。

ここで名桜大は、すぐさまマウンドへエース嘉手川聖也(首里・2年)を送るが、3番田中、4番松山拓に連続ヒットを打たれ、2対1と逆点された。

緊急登板の嘉手川は、2回にも3本のヒットで2点を失い、3回もヒット3本を打たれ1点を失った。

4回以降は、被安打2の無失点と立ち直っただけに序盤のピッチングが悔やまれるものとなった。

一方の攻撃陣は4回表に久田が足で魅せた。

四球で出塁した久田は、犠打と内野ゴロで2アウトながら三塁へ。

相手投手は三塁ベースを背にする左投手。

ここで久田は果敢にもホームスチールを敢行すると、これが鮮やかに決まった。

5対2と3点ビハインドの7回表には一死満塁から、2番安里龍美(浦添商・4年)がスクイズを決め、3点目をあげた。

2点差まで詰め寄り、なおも二死ながら二、三塁と一打同点のチャンスが続いたが後続が断たれ追加点は奪えなかった。

8回、9回は、西日本工業大の3人目の投手坂口の前にヒットを放てず無得点に抑えられ、神宮への夢は断たれてしまった。

名桜大は昨年秋から監督が不在。

学生コーチを務める瀧川拓弥(金光学園=広島・4年)は、「3点以内に抑えて接戦に持ち込もうと思っていた。

序盤の失点以外は自分たちの試合運びができたと思うが、あと1本がでなかった。

」と振り返った。

監督不在のチームを牽引してきた主将の久田は、この日、3安打2盗塁とプレーでチームを引っ張った。

多くの4年生部員が最後の大会とする今大会。

久田は「選手一人一人の意識が高く、まとまりがあり皆ついてきてくれた。

チームメイトには恵まれていた。

神宮を狙って冬(の練習)も過ごしてきただけに負けて悔しい。

」と目を赤くした。

久田自身は、秋まで続けるかどうか気持ちがまだ定まっていないといい「このチームは2、3年生主体の若いチームなので、この悔しさを次につなげてほしい」と主将として後輩たちに託す言葉も口にした。

12.先制の犠飛を放つ名桜大・桑江(2回戦・西日本工大戦) 13.スクイズを含む3つのバントを成功させた名桜大・安里(2回戦・西日本工大戦) 14.4回以降は立ち直り無失点だった名桜大・嘉手川は序盤が悔やまれる(1回戦・西日本工大戦) 12.先制の犠飛を放つ名桜大・桑江(2回戦・西日本工大戦)

1回戦

1回戦

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
沖縄大 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1
崇城大(熊本県)0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
(沖) 山城翼―新垣太
(崇) 澤田、佐藤―堀
ニ塁打 : 新垣太(沖)、米井(崇)

打つのはアイツしかいない!エースの思いに応えた新垣太一

「中々味方が点を取れない試合。

太一も当たっていなかったけど、打つのはアイツしかいないなと。

嬉しかったです。

」と、試合後の山城翼は、高校一年生からバッテリーを組んできた女房役である新垣太一の決勝タイムリーを素直に喜んだ。

熊本地区1位で乗り込んできた崇城大学との初戦。

「しんどい試合になるとは思っていた」と、指揮官も覚悟していたゲームは想像以上だった。

沖縄大学は3回に亀川良太がセンター前ヒットで出塁したが、それ以降は崇城大学二人のピッチャーの前に沈黙させられる。

6回こそ、二死から1、2番が連続四球を選んだものの三振に斬られ、「塁上に出させてもらえないから(ベンチとして)動かしたくても動かせない」(大城監督)苦しい展開に。

だが9回、一死から内間安音が四球で出塁すると、「あそこはセオリー通りに送って4番に任せるしかない」と、ベンチも腹を括って新垣太一を送った。

3打席目にバスターからのヒッティングスタイルに変更してから、「自分に合ってきていた」とは新垣太一。

1、2球目はさすがに体が固くなっていたのか、体が開き気味でタイミングが合わなかったが、右方向を意識した4球目の真っ直ぐに反応したバットから聞こえた快音は、センターの頭を襲う決勝のタイムリー二塁打となり、ナインたちの歓声へと変わっていった。

投げては「彼に尽きる」と、指揮官も脱帽したエース山城翼が、136球2被安打7奪三振で完封。

思ったよりストレートが走らず、1回の二死二塁、3回には二死から崇城大学・米井に三塁打を放たれるも、ツーシームを中心に打たせてとるピッチングできっちり後続を断ち続ける。

8回には「味方がエラーしてのランナーだったし、だからこそ最後は絶対に三振に斬って点を与えない」と、男気あふれるピッチングで見逃し三振に奪うと、9回裏も三人で片付け、チームに勝利をプレゼントした。

13.スクイズを含む3つのバントを成功させた名桜大・安里(2回戦・西日本工大戦)
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大会結果:沖縄大・準優勝。神宮へあと一歩届かず。西日本工業大に逆点負け、初の全日本選手権出場を逃す トップに戻る