4回までに12安打の猛攻を浴びせた嘉手納が29年振り2度目の優勝!

第39回沖縄県高校野球一年生中央大会決勝戦

2014-12-11

僅か2イニングで強豪沖縄尚学高校(以下沖尚)を沈めてしまった、そんな怒涛の攻撃だった。

2点を先制された嘉手納高校(以下嘉手納)は3回裏、先頭の古謝巧真がセンターオーバーの二塁打を放ち、沖尚野手陣の送球ミスの間に一気に三塁を陥れた。次打者は遊ゴロで本塁へ転送されるも古謝の足が速くフィルダースチョイスで1点を返す。ワイルドピッチで二進後、仲地玖礼(くおれ)のライトへのタイムリーで同点に追い付いた。

そして4回、四球と知花拓哉の二塁打、そして古謝のバントヒットと下位打線で無死満塁のビッグチャンスを作り出すと一死後、仲井真光亮の打球はレフト前へ。当然スタートを切った三塁走者だったが、チャージからの好返球を見せた知念大河のプレーに阻まれた。次打者の当たりは緩い遊ゴロとなるが、そのボテボテが嘉手納に有利に働く。ファーストへの悪送球を誘い二塁走者がホームを踏むと、2打席連続となる仲地のタイムリーで二者が生還。この日4安打をマークした幸地諒承(りょうすけ)がレフト前で繋ぐと代打で登場した幸地隆輝(りゅうき)が、センターの頭上を襲う2点タイムリー。気付けばこの2イニングだけで打者16人を送った嘉手納は、9本のヒットを記録するなど大量7点をボードに刻み試合を決定づけた。

マウンドを預かった仲地は、沖尚打線に13安打を許す苦しいピッチングも、9つの三振を奪うなど要所を締めて3失点に抑え、143球完投で、29年振り2度目の優勝を手繰り寄せた。

敗れた沖尚だが、全4試合で二桁安打を記録しチーム打率は.378に達するなど、同校にとっては屈辱となった秋の初戦敗退を払拭するかのような猛打が光った。また、ブロックを2つに分けた一回戦と準々決勝を、宮古と八重山での離島開催とした今大会。僅か2日間とはいえ、島の野球ファンにも十分満足出来る催しとなったのではないだろうか。どうしても本島での大会運営が続いてしまう中で、負担が重くなってしまう離島の野球部のことを思えばこそ、決断した今回の県高野連の英断には拍手を送りたいと心から思う

決勝戦

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
沖縄尚学0 1 1 0 0 0 0 0 1 3
嘉手納0 0 2 5 0 0 0 0 x 7
(沖) 諸見里俊、牧門-仲西
(嘉) 仲地-知花
本塁打 : 仲西(沖)
ニ塁打 : 大城、古謝、知花、比嘉(嘉)

準決勝戦

 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
知念0 1 0 0 0 1 0 1 0 0 0 3
嘉手納0 1 1 0 0 1 0 0 0 0 1x 4
(知) 新垣太-金城
(嘉) 仲地、大城、仲地-知花
ニ塁打 : 仲井真、仲地、古謝、大城(嘉)、瑞慶覧(知)

準決勝戦

 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
沖縄尚学0 3 0 1 0 0 0 1 0 0 5 10
石川 1 0 0 1 0 0 1 0 2 0 4 9
(沖) 牧門、比嘉優、諸見里俊-仲西
(石) 當山大、ブランドン、知花-我如古
三塁打 : 伊波大、當眞(石)、知念大河(沖)
ニ塁打 : 徳山、平良(石)、大兼久、比嘉優(沖)

数字で見る 嘉手納 vs 沖縄尚学

沖縄尚学と嘉手納の新人中央大会と一年生中央大会の成績徹底比較

 嘉手納
新人中央大会一年生中央大会 新人中央大会一年生中央大会
1.33(27回4自責点)3.09(35回12自責点)防御率1.75(36回7自責点)1.13(40回7自責点)
0.271(118打数32安打)0.290(155打数45安打)被打率0.235(136打数32安打)0.226(164打数37安打)
5.00(15四死球)3.09(12四死球)与四死球率2.25(9四死球)1.13(5四死球)
5.33(16得点)7.71(30得点)得点率5.56(21得点)3.60(16得点)
4.33(13失点)4.63(18失点)失点率2.38(9失点)2.03(9失点)
0.386(101打数39安打)0.378(135打数51安打)打率0.363(135打数49安打)0.320(147打数47安打)

 夏の選手権大会が終りを告げると、各校ともに新チームがスタートする。その始めの大会である新人中央大会(以下新人)と、秋季大会は殆どが同じオーダーで戦うため成績がリンクすることも珍しくない。 (平成19年の中部商が新人・秋季・一年生と3連続で決勝へ進出。21年嘉手納、24年沖尚、25年美里工が新人・秋季連続決勝進出。【嘉手納、沖尚、美里工は翌年のセンバツ出場権を獲得している】)。 だが、同一年度での新人中央大会と一年生中央大会(以下一年生)で連続決勝進出校となると先の中部商以来出てきておらず、滅多に遭遇するものではない。しかし今回は、その新人の決勝で火花を散らせた両校が再び合い間みえたのだ。 その新人と一年生の両大会の決勝が、同じ顔合わせというのは過去にあったのだろうか。実は39年間で僅かとはいえ2度あることが分かった。

平成7年(新)浦添商 5対3 沖水
平成7年(一)浦添商 5対2 沖水
平成9年(新)沖水 18対1 沖尚
平成9年(一)沖水 3対2 沖尚 

今回の沖縄尚学と嘉手納の決勝は、平成9年以来18年振りの出来事ということになる。もう一度、先述したデータで、平成7年の一年生大会を制した浦添商のメンバーが、平成9年度の春夏甲子園連続出場。平成9年の新人を制した沖縄水産のメンバーは、翌年春夏の甲子園へ連続出場。さらに、平成9年の一年生大会準優勝の沖縄尚学のメンバーが、平成11年の選抜で県勢初となる優勝(春夏連続甲子園出場も果たす)と、球児たちの目標である聖地・甲子園への切符を掴んでいるのだ。となると俄然、今回の両校にもその期待が十分に懸かる。そこで今回は、来春の選抜大会出場をほぼ手中にしている糸満や秋季優勝の中部商と共に、この世代の中心となっていくであろう沖縄尚学と嘉手納の投手力と打撃力について、新人と一年生の両大会の成績を徹底比較してみることにした。

【 投手力 】

 対照的な両者と言えようか。新人で防御率1.33の沖縄尚学は、柱となる投手こそ出てこなかったものの、1年生から経験を積んでいる神里廣之介や山城悠輔など5人の投手がマウンドへ上がったのに対し、嘉手納は1年生エ-ス仲地玖礼が半分以上に登板しての防御率1.75。この数字がそのまま、一年生大会への数字へと繋がっていった嘉手納に対し、沖縄尚学は3点台を数えている。両大会を合わせた被打率をみると、沖縄尚学が0.282で嘉手納が0.230

同じく両大会での与四死球率は沖縄尚学が3.92と、1試合で平均約4個、一方の嘉手納は1試合で平均約2四球。これらの数字を見る限りにおいては、嘉手納は理想的な数字を残している。全40イニング中34回とほぼ一人で投げ切った嘉手納・仲地の良さは制球力。新人と一年生の両大会で与えた四死球は僅かに4個で、与四死球率は0.63という数字になる。さらに2年生と対峙する新人では奪三振率が4.25だったのに対し、同級生が相手となった一年生大会では、経験値の違いを見せつけるように7.94にまで跳ね上がった。嘉手納の課題は仲地の次の投手育成と思われる。この冬、2年生投手陣の底上げがどれだけ上がるのかにも注目したい。

【 打撃力 】

得点率をみると新人ではほぼ互角の両者だが、沖縄尚学は主将中村将己ら甲子園組みが揃わないといった条件下での数字となっている。一年生も攻撃力が高く1年生大会では嘉手納の倍の得点率を残した。2年生では新人大会で1,2番を務め、二人で打率.450をマークした野原大貴と内間洸介や、打率.545で中軸を務めた赤嶺槇悟ら、そして1年生では183Cm80Kgの恵まれた体躯をいかし、一年生大会で宮古・嘉手納戦と2本の柵越え本塁打を放った打率.438の仲西莉音を筆頭に、宮國龍之介、知念大河、大兼久亮平に加え、池宮秀平、上原光貴、高良諒ら小柄ながらもバットコントロールに優れる好打者が揃う。

対する嘉手納は新人大会15打数9安打7打点の古謝脩也と同、17打数8安打の上地泰雅の2年生コンビがチャンスメークをし、一年生大会で1試合4安打を含む打率.533の幸地諒承や、大城堅斗、そして同大会で4番に座った仲地らが返していく。2つの中央大会8試合での二桁安打が6試合あり爆発力がある一方で、西原、那覇、知念戦での1点差試合を制するなど精神的にもたくましく、好守のバランスでは沖縄尚学に負けてはいない。

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大会結果:4回までに12安打の猛攻を浴びせた嘉手納が29年振り2度目の優勝! トップに戻る