食事と栄養が野球のパフォーマンスに繋がる
食事と栄養が野球のパフォーマンスに繋がる
2016-12-15
勝利のピラミッド
12月に入り、高校野球はシーズンオフが始まった。来年の3月までの長い期間、選手たちには厳しい冬トレが待っているが、これを乗り切れる選手とそうでない選手とでは、春から夏にかけてのパフォーマンスが随分と変わってくる。
埼玉県に本社を置く株式会社コーケン・メディアMCS(Medical Care Sports)事業部食トレトレーナーの奥田未来氏は、身体づくりの基本は栄養=食事と力説。栄養バランスのとれた食事をすることよってまた、栄養の土台をしっかり築くことによって、筋力アップはもちろん持久力もアップすると説く。
コーケン・メディアでは、能力と実力を発揮するための「勝利のピラミッド」と呼んでいるのだが、勝利のための技術力のアップを目標とするならば、当然ながらその下に技術練習が置かれる。さらにその下層には技術練習を効果的にするために選手個人に応じたトレーニングやコンディショニングが置かれる。
言うなれば、きちんとしたトレーニングの下地があって初めて練習での積み重ねが生き、勝利のための技術力が身につくのだ。そのピラミッドの、全ての土台となるスタート地点こそが「栄養」。そこを疎かにしていては、望むべく結果はついてこないのだ。
親の意識の低さが見られる沖縄県
現在、コーケン・メディアからの栄養指導を受けている宜野湾高校野球部の監督である照屋拓己先生は、前任の豊見城高校のときからこの指導をスタート。「やった結果は2009年の春季大会で準優勝に繋がった」と語る。
しかしその一方で、その成功例が次の年にも続くのかというとそうではなかった。
「厳しいことを言うようですが、こちら側の思いと親の気持ちが乖離しているときは、やはり身体づくりにも差が出てくる。
僕ら県立は寮生活ではないのですから、選手たちの全てを管理することは出来ない」のは至極当然。奥田氏は「他の都道府県では、親へ栄養の大切さを説明すると『そんなに良いものなら早速実行しよう』と動くのだが、こと沖縄県に関しては親の意識の低さが見られる」と、互いに警鐘を鳴らす。
全ての栄養をバランス良く食卓に並べるのは、共働きなど母親も忙しい今の時代では難しいだろう。学校でのお昼ご飯をコーラと菓子パンで済ませる部員もいる。だが仕方ないで終わらせてはいけない。家庭の食卓で足りないものを、サプリメントで補うこともひとつの方法なのだ。
選手たちの意識の低さ
しかし親だけの問題でもない。トレーニング→食事(栄養)→睡眠(休養)のサイクルを、より高いレベルで回そうと、肝心の選手自信が意識していないと何にもならない。
朝早くから夜遅くまでトレーニングに精を出す選手たちの努力には本当に頭が下がる思いだが、少しでも早く寝て睡眠を取るんだという意識が薄ければ、スマートフォンやSNSを閲覧して夜遅くまで起きていることを繰り返してしまうだろう。
さらに朝ご飯をしっかりと取らずに1日をスタートさせてしまう選手たちも多いかも知れない。「朝から練習で疲れて、お昼ご飯を食べたら眠くなる。それが授業中での居眠りにも繋がることがある。しかしそれは、仕方ないのではなく、朝ご飯を取らないことでお昼に血糖値が上がり、眠気が襲ってくる」という話も出た。
そこもしっかりと伝えて行くのが指導者の務めだと先生方は仰るが、やはり選手たちの意識の高さがあると無いとでは大きな差となってくる。「高校野球で甲子園を、大学野球で明治神宮を目指すなら、当然それに見合ったトレーニングを課さなければならない。
しかし、食事を疎かにしている選手ほど故障やケガに結びつく」という大学野球関係者や、「故障しない投げ方などを教えるのは指導者の役目。でも食事をしっかり摂取することを奥田氏らが教えてくれて、それを親や選手たちが自分たちのためと身に付けることが出来れば、指導者はより良い方向へと舵を切ることが出来る」という中学硬式野球の指導者の声もあった。
「僕らの秋のベスト4は、食事と栄養を学びそれを実践してきたことでより高いパフォーマンスを発揮することが出来た」とは那覇高校の監督を務める大城康成先生。首里東高校の監督である川満亨先生も豊見城南高校の監督である照屋圭二郎先生も、選手たちの技術力アップや身体つきの変化、そしてケガをしにくくなったと賛同していた。
長いスパンで見る
現在、九州だけでも福岡県の九州産業大学付属九州産業高校、佐賀県の龍谷高校、大分県の明豊高校、長崎県の瓊浦高校、熊本県の東稜高校、宮崎県の高千穂高校、鹿児島県の鹿児島実業高校と神村学園などがコーケンの栄養指導を受けている。
県内の高校では宜野湾高校、首里東高校、豊見城南高校、那覇高校。残念ながら「会社の方針で沖縄県内は4校までしか指導することが出来ない」(奥田氏)のだが、そこから発信していくことで選手や親の意識が変化して「食事と栄養が野球のパフォーマンスに繋がる」ことを共有していきたい。そのための発信を!、というのが監督さんたちの希望でもあった。最後に次の言葉を載せて、このコラムを締めたいと思う。
「野球の技術力が一朝一夕で出来ないのと同じように、選手たちの個人差によって食トレもすぐに効果が出るわけではない。でも気付いたら3年間、ケガなく過ごすことが出来たじゃないか(もしくはケガしてしまったとしても、治りが早かったじゃないか)ということを、親も選手たちも感じて貰えたなら」。トレーニングは長いスパンで見守ってもらいたいと願う。(當山)
※株式会社コーケンメディケアスポーツ http://medicare-sports.jp