おきなわ野球大好き新春特別企画:僕たち県外で頑張ってます!
僕たち県外で頑張ってます!
2015-01-15
僕たち県外で頑張ってます!
高崎健康福祉大学高崎高校野球部柴引良介、知念和万、比嘉翼、金城大将
春夏の甲子園でベスト4入りするなど、今や全国にその名を知らしめる群馬県の高崎健康福祉大学高崎高校野球部(以下健大高崎)が12月に沖縄キャンプを行なった。その野球部に、生まれ育った地を飛び出して、群馬の地で頑張る沖縄の球児たちがいる。 12月末、健大高崎が練習を行なっている西崎球場を訪ね、4人の沖縄出身部員と会った。
聖地に衝動を与えた機動破壊
去った第96回全国高校野球選手権大会群馬県大会にて6試合35盗塁をマーク。乗り込んだ甲子園でも初戦の利府高校(宮城県)戦で記録した11盗塁を含む、4試合26盗塁と走りまくってベスト4入りを果たした健大高崎。彼らの野球を象徴する「機動破壊」という言葉は、今や全国に轟くほどになった。
群馬女子短期大学附属高校から平成13年4月、現校名へと変更し男女共学になった健大高崎。その翌年群馬県高野連へ加盟して野球部がスタートしたが、元々が女子高だったのもあり、野球部が練習出来るグランドは無く、「(グランドが出来る)平成19年までずっとジプシーでしたね」と、青柳博文監督は振り返った。
野球部創部10年目となった平成23年、夏の群馬県大会を制して悲願の甲子園初出場を決めた健大高崎は、その初戦で今治西高校(愛媛県)を下し、聖地初勝利を手に入れる。年が明けた第84回全国選抜高校野球大会では、選抜大会初出場にも関わらず天理高校(奈良県)、神村学園(鹿児島県)、鳴門高校(徳島県)と強豪校を次々と撃破してベスト4入り。この間、群馬県でも夏秋春の県大会全てを制するなど強さを見せつけた。平成26年、3年振りに夏の選手権群馬県大会を制すると、脇本直人(ドラフト会議にて千葉ロッテより指名を受ける)らの活躍で、夏の甲子園では初となるベスト4へ。続く秋の国民体育大会(長崎がんばらんば国体)では準優勝を果たした。
そんな健大高崎には、聖地を目指して頑張っているメンバーの中に4人の県出身者が居る。夏の甲子園でも4番を務めた柴引良介を筆頭に、知念和万、比嘉翼、金城大将。沖縄キャンプで帰省していた4人の、「僕ら県外で頑張ってます!」との元気な声と姿を、みなさんにもお届けします。
柴引良介(Shibahiki Ryosuke)
1997年5月3日生まれ。宮里スラッガーズの主力として活躍し、6年生冬の県大会で初出場初優勝。中学では北谷ボーイズに進み、3年の夏ジャイアンツカップでベスト16入り。去った夏の甲子園で7番としてベスト4入りに貢献。長打力ある打撃が魅力の、生粋のスラッガーだ。
知念和万(Chinen Kazuma)
1997年4月7日生まれ。北玉ライオンズにて6年生の夏、4番に座り県大会ベスト8、千葉市長旗学童軟式野球選手権大会で優勝。北谷ボーイズで、柴引らとともにジャイアンツカップでの16強入りに貢献。相手の速い球でも力負けせずに打ち返す、力強い打撃が魅力だ。
比嘉翼(Higa Tsubasa)
1997年7月31日生まれ。第1回中部北支部琉球新報杯学童軟式野球大会にて準優勝するなど、山内スピリッツで内野手として活躍。北谷ボーイズでは柴引、知念らとともに県内外の大会で数々の栄光を分かち合う。守備範囲の広さ、球際処理の巧さ、肩の強さに優れる。
金城大将(Kinjyo Taisyo)
1998年9月14日生まれ。九州学童軟式野球大会ベスト4、冬の県大会では、チームではもちろん中城ブロックでも初となる優勝を果たすなど、仲順ドラゴンズでエースとして活躍。北谷ボーイズでサードにも挑戦し、3年の夏、ボーイズリーグ選手権大会ベスト8進出。健大高崎でも一年生大会で6番として先発出場している。
それぞれ野球を始めたのは
柴引 「兄の佑真(沖縄尚学ー岐阜経済大)が野球をやっていたのもあって、幼稚園の頃から始めてました。その頃から主にサードを守ってましたね」
金城 「同じく幼稚園からですが、僕の場合はお父さんがチームの監督だったので。3年生の頃からピッチャーを務めてました」
比嘉 「僕は3年生から始めて、今と同じくショートを守ってました」
知念 「僕の場合はずっと遅くて5年生からですね」
中学では金城くんも含めてジャイアンツカップで16強入り。そして進路先に健大高崎を選んだのですが、そちらでの1日の流れを教えて頂けますか?
金城 「朝7時に朝食。50分頃から寮の清掃を終えて8時20分に登校します。僕らはアスリートコースに所属してまして、火曜日と木曜日は選考実技で5校時から野球部の練習に入りますので、その時は時間・量ともに充実した練習が出来ます。7時から8時頃に帰寮。10時に点呼があって消灯が11時となります」
寮に帰ってからも自主練習されるのですか
金城 「個々によって違いますが殆どの人がやります。夕食の時間は決まっているのですが、全員が揃って食べる必要は無いのが健大高崎。ですから自主トレに時間をかけて遅れたという、とがめは無いのです」
それは良いですね。野球部としての魅力はどうでしょうか
柴引 「各専門の先生がいたり、トレーナーがいたりと、約10名という指導者の多さが魅力です」
比嘉 「頭ごなしにこうやれ!ではなく、ひとりひとりにあった適切な方法で接してくれる点も凄いと思います」
75名ほどの部員に対しての、その指導者の数ですもんね。実際に受けた技術指導など教えて頂けますか?
柴引 「インコースの球に詰まってしまうことがありましたが、僕の場合は左肩が内に入るクセがあったらしく、そこを指摘してくれました」
知念 「外の変化球への対応として、外のスライダーを打ち続けるようにと。身体(左肩)を開かないように意識するには最適の練習でした」
比嘉 「僕はリストの使い方を教わりました。時々緩んでいることを見抜かれて、それで矯正することが出来ました」
皆さんの顔を見ていると、そういうことの積み重ねの充実度が伝わります。県内を出て、自分の中で変わったことは何でしょう
金城 「野球部での練習や寮の生活も通して、自律の意味が分かってくるようになりました」
知念 「寮はちょっと厳しいけどね(苦笑)。僕はホントわがままで。でもここへ来て、人の気持ちが分かるようになって、少しは気配りが出来るようになりました」
比嘉 「社会に出ても通用するような、目上の人に対してのマナーや礼儀といったことを教えてもらいました」
柴引 「これはみんな一緒だと思いますが、やはり郷土を離れて改めて親の有り難みが分かります。感謝の気持ちでいっぱいになります」
このインタビューのあと、シートノックを見させてもらったが、その雰囲気はまるで大学のキャンプかと思うほど。個々の能力の高さはもちろんのこと、送球の間の切り返しの速さや正確なターンなど、体幹の強さが確実且つ力強いスローイングを生む。さらに選手全員の掛け声で、強烈な一体感に包まれた。
取材の中で、青柳監督から沖縄の中学生たちへのメッセージを受け取ったので、それを載せて締めたいと思う。
青柳監督「野球というのはチームプレー。個人の勝手ではやっていけない。なので、普段の生活からキッチリとしておかないとダメなんです。当たり前のことかも知れないけど、毎日学校に出ること、宿題、課題があれば一つとして未提出を残さないなどが繋がってきます。あと、高校で伸びてくる選手というのは、指導者の言葉にしっかり耳を傾けられる子。自分は自分と、意地を張っている子は決して伸びない。素直さが無いとダメです」
身体能力の高さと、伸び代という点で沖縄の子は凄いと青柳監督は語る。未完成だからこそ、こちらが教える緻密な野球と知識を教えるのだが、それに素直に従える心があると、見違えるほどに成長する。加えて群馬で育った子に対し、沖縄の子とのウマが合うのをひしひしと感じると仰ってくれた。
甲子園を目指すのは全ての球児の目標であり夢だ。だが、それだけに止まらない魅力が健大高崎にあることをこの日、4人の県出身者が教えてくれた。県外への「野球留学」という、もう一つの高校野球の道。ある程度甘えが許される親元を、敢えて離れて頑張ってみようと自分の道を決めた球児たちの、これからの活躍に期待する。
監督取材
健大高崎硬式野球部戦歴
2002年 | 群馬県高野連加盟 |
2006年 | 第59回秋季関東地区大会群馬県大会準優勝 |
2011年 | 第93回全国高校野球選手権群馬県大会優勝 第64回秋季関東地区大会群馬県大会優勝 同秋季関東地区大会ベスト4 |
2012年 | 第84回全国選抜高校野球大会初出場ながらベスト4 第64回春季関東地区大会群馬県大会優勝 同春季関東地区大会優勝 |
2013年 | 第66回秋季関東地区大会群馬県大会優勝 |
2014年 | 第96回全国高校野球選手権大会群馬県大会優勝 第96回全国高校野球選手権大会ベスト4 第67回秋季関東地区大会群馬県大会優勝 同秋季関東地区大会ベスト4 国民体育大会(長崎がんばらんば国体)準優勝 |