大平 山人・春のセンバツ観戦記

第87回選抜高等学校野球大会

2015-04-15

ようやく冬が終わり、春の訪れを感じていたのですが、選抜大会開催と同時に、強力な寒の戻りとなり、特に明け方は真冬の寒さとなりました。

これは、うちな~んちゅには大きく不利になるかと、朝から気になっていましたが、試合開始前に、春のティ~ダ(太陽)が顔を出し、気温も上がって来ました。沖縄に比べれば、未だ未だ低い気温ですが、これだけ上がれば、試合に支障無いハズ。

沖縄代表である糸満への、県民全員の思い、ひいては、ぐす~(天国)のご先祖様た~の思いが伝わったんだハズ。全力を発揮できる環境は整いました。

しかし、相手は強豪ひしめく近畿大会を征した天理。140kmを越える速球を投げ込む投手こそいませんが、皆抜群の制球力とキレの良い変化球を投げ、何よりも、その強力打線は、上位下位とも切れ目無く、どこからでも大量点が狙える、正に優勝候補です。やしがよ(しっか~し)、わった~島の代表の糸満も、強豪揃いの九州大会準優勝の上等チーム。下馬評では天理有利との声が多くありますが、それを覆すことも、高校野球の醍醐味です。全力でいちゅんど~(行くぞ)!

文 / 大平 山人

3月25日

 1 2 3 4 5 6 7 8 9
糸満0 0 0 1 0 0 0 0 1 2
天理0 0 1 1 0 1 2 2 x 7
(糸) 金城(乃),平安,安谷屋,金城(乃)-比嘉(良)
(天) 斎藤,森浦-堤田

初回表、天理の先発斎藤は、噂に違わぬ素晴らしい投球。コーナーギリギリに直球や変化球を決め、糸満打線を翻弄します。好投手の条件は、球の速さだけでは無いと言う、典型だと思いました。その裏、糸満先発の金城(乃)も秋よりも速度が向上した直球を主体に、強打天理打線を3者凡退に抑え、上々の投球です。

2回表、糸満は先頭の金城(乃)が左前にこの試合両校通じての初安打を放ち、続く太田が今回の糸満を象徴する送りバントをキッチリ決め、後続に託します。ここで応援席は、浦添商業から発祥し、今や沖縄の応援席を代表する応援歌となったサンバで大いに盛り上がります。続く金城(旭)の1塁ゴロの間に金城(乃)が3塁へ進むも、後1本が出ずに無得点。その裏、天理の主砲坂口が登場しました。

秋に、抜群の制球力で、1試合平均0.6個の四死球しか与えなかった金城(乃)でしたが、ここは慎重に行き過ぎ四球。しかし、その後の3名をきっちりと抑え、無得点で切り抜けました。3回表、糸満は1死後に比嘉(良)が中前に安打を放つものの、併殺で無得点。その裏、先頭の前久保が中越2塁打で、天理初安打。続く堤田が送り、1死3塁。ここで、何が何でも先取点は渡したく無い糸満は、極端な前進守備を引きます。強打天理に勝つためには、とにかく先制先行し、必死に守って逃げきるしか無いと言う作戦は、筆者もその通りと思います。そのためには、この、諸刃の劔と言える前進守備も、致し方ないと思います。

しかし、勝負は無情。続く船曳の痛烈な当たりは、2塁手の横を抜け、先制を許してしまいました。

しかし、駿足舩曳の盗塁を比嘉(良)が刺し、斎藤,貞光の連続安打と、坂口が2打席連続で四球を選び、2死満塁。ここで、続く冨木を中飛に抑え、4安打1四球ながら、最小の1点で凌ぎました。ピンチの後にチャンス有り!4回表、先頭の岡田が中前安打で出塁し、大城三振の間に2塁へ盗塁。2死後、太田が左中間を破る2塁打を放ち、すかさず同点。アルプスは、逆転を信じ、大声援を送ります。

しかし、天理のバッテリーはそんな我々の応援は想定内であったのか、全く動揺すること無く、続く金城(旭)を三振に切って取りました。もう少しで、先行することができたのですが、非常に惜しかった攻撃でした。その裏天理は、1死後に橋本が左前安打で出塁。

そして、続く前久保の当たりは、中堅の頭を越える3塁打。逆転し、再度先行する天理。なおも1死3塁でしたが、ここは金城(乃)が踏ん張り、今回も最小失点で凌ぎました。5回、糸満は金城(匠)が四球で出塁するも無得点。その裏、過去2打席は連続四球だった天理の主砲坂口は、金城(乃)の巧みな投球で3塁邪飛で3者凡退。

6回表、糸満は3者凡退に抑えられると、その裏、天理は1死後に川崎が中前安打で出塁。そして続く橋本の当たりは、痛烈に右翼線を襲います。更に、その跳ね返った球の処理に手こずる間に、川崎が返り、1-3で差を広げられてしまいました。なおも1死3塁でしたが、ここも糸満守備陣が踏ん張り、この回も1点で凌ぎました。毎回のように危ない場面がありますが、それでも、最小失点で抑える所に、鉄壁な守備を感じます。

7回、糸満は金城(旭)が中前安打で出塁するも元得点。その裏、天理は先頭の舩曳が四球で出塁し、続く斎藤のバントを惜しくも野選で無死1・2塁の危機。続く貞光のあわや中前に抜けるかと言う当たりを岡田が好捕し2重殺。2死3塁となり、主砲坂口との4度めの対戦です。

カキ~ン!快音を残し、打球は左中間にグングン伸びます。ついに火を吹いた天理の主砲。強烈な2点本塁打を喫してしまいました。何とか後続は絶ちましたが、終盤に来て痛い2失点で1-5と差は広がりました。

8回表、1死後に主将の池間がこの試合初安打となる中堅越の2塁打を放ちます。2死後、大城が右肘付近に死球を受け、2死1・2塁。ここで、何とか得点差を縮める1打を期待したのですが、天理の斎藤は、ここでも動揺は見せず、金城(乃)を3塁ゴロに仕留め、得点を許しませんでした。

その裏、1死後に代打檜垣に左前に安打を放たれた所で、金城(乃)が右翼に入り、投手は平安に交替です。平安は、この試合2長打の前久保を1球で左飛に抑え、ここで糸満は投手を更に安谷屋に交替。安谷屋は、制球が定まらず、球を置きに行った所そ狙われ、堤田に中前、船曳に右翼線へ3塁打を放たれ1-7。ここで右翼から先発した金城(乃)を戻し、斎藤を3塁ゴロに抑えました。

最終回、天理は投手を森浦に交替です。糸満アルプスは、逆転を願い、ありったけの力を使っての応援です。1死後に金城(旭)が1塁ゴロ失策せ出塁すると、ここから糸満は代打攻勢。2死後、代打比嘉(海)の当たりは、大きく跳ねながら1塁手の前へ、懸命に伸びる坂口ですが、打球はそのグラブに入りきらず、右前に達します。ここで、2塁から、金城(旭)が返り1点追加で2-7。しかし、最後の島袋が2塁ゴロに抑えられ、試合終了です。

秋の九州大会において、評判高い相手を次々と撃破し、準優勝を勝ち取った糸満。今回も、その再現を期待したのですが、残念ながら、甲子園での糸満初勝利は次回以降へのお楽しみとなりました。しかし、この冬を越え、糸満は守備陣打撃陣共に、秋よりも更なる実力の向上を遂げたと思います。ですが、残念ながら、天理は糸満の上を行く進化を遂げたのだと思います。神宮大会で、初戦敗退を喫した悔しさを冬の猛練習の原動力にしたことは、想像に難くありません。

糸満の守備は、全国的にも相当上位と思います。甲子園での初勝利を掴むためには、更なる機動力の向上と、切れ目の無い打線の充実があれば、それはもう手が届く所だと思います。記念すべき甲子園初勝利の瞬間には、きっと立ち会うからよ~。

初戦敗退ではありましたが、うちな~の若人た~が甲子園で躍動する姿を観ることは、沖縄の野球大好き人間にとって、何にも勝る元気の源です。しっかり堪能し、充電したので、夏までちばって(頑張って)行けそうです。

糸満の諸君、素晴らしい時間をたんでぃが~たんでぃ~!

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