目指せ聖地の初勝利!糸満高校
センバツで輝け!第87回全国選抜高校野球大会
2015-03-14
まさかの新人大会地区予選敗退
2009年から5年連続で新人中央大会南部地区予選を突破していた糸満高校にとってはショッキングな敗退だった。初戦の久米島高校に0対2で敗れるも、次戦の豊見城南には5対2と勝利。だが知念高校との試合で1対12と大敗。この瞬間、中央大会への道は閉ざされてしまった。(この後、知念高校は南部地区予選1位通過を果たす)。「これまでで一番弱い」と、上原忠監督は何度も口にするほどであったが、8月19日からの九州遠征で東海大五高校や東福岡(以上福岡県)、ルーテル学院(熊本県)などに勝利してナインは徐々に自信を回復し始めていった。
神がかった大城龍生のバット
そして迎えた秋、初陣の那覇工業戦の初回に一死満塁とチャンスを作ると太田貴斗がスクイズを成功させる。その後にも我那覇裕希、比嘉海斗に連続タイムリーが飛び出し3点を先制して初戦を突破すると、南風原高校、八重山高校、名護高校に快勝してベスト4へ進出する(この3試合の間、22得点無失点)。そんな糸満高校の前に立ちはだかったのが、準々決勝で7回参考ながら完全試合を達成していた中真慶大だ。だが糸満は1番の池間誉人が内野安打で出塁すると、続く岡田樹が三塁打を放ち僅か2人で1点を奪う。3番大城龍生も5球目をセンター前に運び岡田を迎え入れると、盗塁と犠打で三塁へ進んだ大城龍を、太田がスクイズで生還させ3点をボードに刻んだ。3回にも金城乃亜の犠牲フライなどで得点を重ねるなど、序盤で中真を攻略。全試合二桁安打をマークした首里打線に終盤追い上げられるも、金城乃と安谷屋正貴の粘投で振り切り、決勝進出と同時に九州地区高校野球大会(以後九州大会)出場の切符を手に入れた。ここまでの立役者は何と言っても大城龍だろう。那覇工業戦で3安打を放つと、決勝までの6試合全てでマルチヒットを記録するなど、23打数16安打をマーク。打率は驚異の.696にまで跳ね上がり、打点(8)得点(10)盗塁(6)と、全てでチーム最高の数値を叩き出した。敗れはしたものの、中部商業前田敬太から2安打を放った意地を、強豪が集う九州大会でも見せつけ打率.533と爆発、チームの九州大会初勝利のみならず準優勝という結果に大きく貢献した。
神谷大雅の後継者、池間誉人
そんな大城龍の前を任されるのが池間と岡田である。春季県大会優勝、選手権沖縄県大会準優勝の前チームでも二遊間を組んでいた2人。岡田が2番、池間は3番を任されていた。常々「僕の中では一番良い打者が1番を務める」と語る上原監督。前チームで1番を務め、春季県大会で打率.632を残した神谷大雅の後継者に指名された池間は、那覇工業戦こそ1安打だったが、次戦以降2、2、3とヒットを積み重ねてチームを牽引。秋の公式戦こそ大城龍に主役を譲ったが、練習試合も含めた数字では、二塁打19、三塁打8、本塁打4、盗塁22といずれも大城龍を引き離してチームトップの成績を収めている。 1月に行われた高校野球部対抗競技会(以後競技会)でも、池間と岡田はその身体能力を存分に発揮。バネとスピード、筋力と瞬発力を図る種目が100m走と塁間走、そして立ち三段跳びと言えようか。100m走で11秒台、塁間走で14秒台、立ち三段跳びで8m以上をマークしたのはたった8人しか居ない。
※(参照:100m走のエントリー者は488人、塁間走と立ち三段跳びは490人がエントリー)
(100m走)11秒47(5位)
(塁間走)14秒56(3位)
(立ち三段跳び)8m59(16位)
立ち三段跳びには出場していない岡田も、100m走で11秒75、塁間走では池間を凌ぐ14秒41を記録。県ナンバーワンの斬り込み隊の2人は、聖地でも躍動してくれるはずだ。
エースへと成長した金城乃亜
右の金城乃亜と左の安谷屋正貴が中心の投手陣。秋の大会前では、どちらかと言うと那覇工業戦でも先発した安谷屋がエース格だった。とはいえ、どちらも絶対的な信頼とまでは行かず、首里戦まで金城乃が投げた5イニングが最長。だが決勝戦で9回ツーアウトまでマウンドを任せられた金城乃が九州大会では完全に主役。佐賀学園(佐賀県)戦で7回2失点と好投すると、明豊(大分県)戦でも8回まで2失点とゲームを作り、豪打の九州学院(熊本県)打線をも、7回裏まで無失点に抑える成長ぶりを見せた。そんな二人の生命線はコントロール。秋季県大会で与えた四死球の数は2人合わせても3つしかないのだ。しかし、制球力を保つために、全力投球をどこかで控えているのか。県大会での二人のストレートは130キロ前半と、どこか物足りなさも感じたものだ。だが、競技会で金城乃が投じた遠投は、119m15をマークし堂々の1位に輝いた。この長い冬を越した選抜大会ではきっと、140キロを超える、これまでとは見違えるストレートで、相手打者を抑え込むことだろう。もしかしたらもう一人、大城龍も復活のマウンドを飾るかも知れない。楽しみにしたい。
望まれる下位打線の奮起
秋季県大会チーム打率.352をマークした打線で、1番池間から5番太田貴までは不動の打順。合計で44本のヒットを重ねた5人の打率は.427、打点は24となる。だがそれ以降の下位打線の打率は.250を下回ってしまう。ここの底上げがないと甲子園では厳しいと思われる。キーマンは我那覇(秋季県大会打率.333)と金城旭貞(九州大会打率.333)だろうか。この二人を中心にした下位打線がチャンスを作り、1番へと回せるようになってくると初勝利はもちろん、昨年の沖縄尚学高校が記録したベスト8も十分見えてくる。
中部商の監督時代を含め、これまで何度も九州大会や全国高校野球選手権大会で厚い壁に跳ね返されてきた上原監督だったが、佐賀学園戦で快勝すると、延長戦を二度も制してついに選抜大会の切符を手に入れた。既に名将の誉れ高い同監督だが、甲子園での勝利は悲願中の悲願。「聖地で母校でもある糸満の校歌を歌う」という目標は、糸満ナインにとってはもちろん、地域住民の願いでもある。スピード感あふれる野球を展開するそのタクトに選手たちが応えたその先に、甲子園初勝利が待っている。
チバリヨー!糸満高校!!
糸満高校ナインの秋季県大会成績
氏名 | 打数 | 安打 | 打点 | 得点 | 四死球 | 三振 | 盗塁 | 打率 |
池間 誉人 | 26 | 9 | 4 | 6 | 2 | 2 | 2 | 0.346 |
岡田 樹 | 22 | 6 | 1 | 6 | 3 | 0 | 2 | 0.273 |
大城 龍生 | 23 | 16 | 8 | 10 | 1 | 1 | 6 | 0.696 |
金城 乃亜 | 17 | 6 | 4 | 4 | 3 | 1 | 0 | 0.353 |
太田 貴斗 | 15 | 7 | 6 | 1 | 1 | 2 | 2 | 0.467 |
我那覇 | 18 | 6 | 2 | 2 | 2 | 3 | 1 | 0.333 |
金城 匠 | 11 | 3 | 1 | 2 | 5 | 1 | 1 | 0.273 |
比嘉 良 | 14 | 3 | 1 | 1 | 2 | 4 | 1 | 0.214 |
比嘉 海 | 12 | 3 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0.250 |
金城 旭貞 | 5 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0.200 |
安谷屋 | 5 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0.200 |
氏名 | 投球回 | 打者 | 被安打 | 奪三振 | 与四死球 | 自責点 | 防御率 | 被打率 | 奪三振率 | 与四死球率 |
金城 乃亜 | 21,2/3 | 85 | 20 | 15 | 2 | 5 | 2.08 | 0.235 | 5.72 | 0.76 |
安谷屋 | 13,2/3 | 51 | 13 | 6 | 1 | 2 | 1.32 | 0.255 | 3.46 | 0.58 |
平安 | 5,2/3 | 21 | 3 | 5 | 1 | 0 | 0.00 | 0.143 | 8.04 | 1.61 |
山城 | 2 | 8 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0.00 | 0.375 | 0.00 | 0.00 |
▽チーム成績
打数 | 安打 | 得点 | 打率 | 投球回 | 自責点 | 防御率 |
176 | 62 | 34 | 0.352 | 50 | 7 | 1.26 |
▽選抜出場までの道のり
新人中央大会南部地区予選
● 0-2 久米島
○ 5-2 豊見城南
● 1-12 知念
秋季県大会
1回戦 ○ 5-1 那覇工2回戦 ○ 6-0 南風原
3回戦 ○ 8-0 八重山
準々決勝 ○ 8-0 名護
準決勝 ○ 5-3 首里
決勝戦 ● 2-3 中部商
九州地区大会
2回戦 ○ 11-2 佐賀学園
準々決勝 ○ 9-6(11) 明豊
準決勝 ○ 4-3(10) 神村学園
決勝戦 ● 3-4 九州学院